駐車場の賃貸借契約書とキッチンカーの賃貸借

駐車場は「区画を貸す契約」、キッチンカーは「車と設備を貸す契約」。それぞれ争いになりやすい点を、性質の条と精算の条で押さえます。

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駐車場の契約に性質の条がないと、区画内の盗難やいたずらの責任を貸主に求められることがあります。

このページの要点

  • 駐車場の契約は区画の使用を内容とする賃貸借で、車を預かる寄託ではないと明記し、車両の管理は借主の責任とする。
  • 区画番号と車両を届け出させ、支払日・滞納による解除・禁止行為の空欄を埋める。
  • 無催告解除の特約は限定的に効力が認められる。滞納の期間を具体的に書き、催告を経る運用と組み合わせる。
  • キッチンカーは車両と搭載設備を特定し、保険・整備の負担、保証金の控除の明細、返還時の記録を決める。

結論:駐車場は「区画を貸す契約」、キッチンカーは「設備ごと貸す契約」と性質を書く

車にまつわる賃貸借のうち、事務所の資料に実例があるのが、駐車場(自動車の保管場所)の賃貸借と、キッチンカー(移動販売車)の賃貸借です。どちらも「貸して、使ってもらって、返してもらう」点では同じですが、紛争になりやすい点が違います。駐車場で争いになるのは「車が傷ついたら貸主の責任か」で、契約書は区画の使用を内容とする賃貸借であって車を預かる契約ではない、という性質を最初に書いておくことが中心になります。キッチンカーで争いになるのは「車と設備をどう使い、どう返すか」で、車両と搭載設備の特定、使用地域、返却の時刻、保険と整備の負担、保証金の精算が中心になります。

駐車場の賃貸借契約書:寄託ではないことを書く

事務所が作成した駐車区画の賃貸借契約書では、本契約は区画の使用を内容とする賃貸借であり、車両を預かる寄託・保管の契約ではないこと、車両と車内の積載物の管理は借主の責任であること、区画内での盗難・接触事故・いたずら・損傷について貸主は責任を負わないこと、を性質の条として書きました。寄託とは物を預かって保管する契約のことで、預かった側には保管の義務が生じます。駐車場の貸主が保管の義務まで負うつもりがないなら、そのことを契約の冒頭で両者が確認しておく必要があります。

駐車場の契約の性質

区画の賃貸借(作成した契約書の形)車を預かる契約(寄託・保管)

貸主がすること

区画の賃貸借(作成した契約書の形)区画を使わせる

車を預かる契約(寄託・保管)車を預かり、保管する

車の管理

区画の賃貸借(作成した契約書の形)借主の責任

車を預かる契約(寄託・保管)預かった側に保管の義務が生じる

区画内の盗難・接触

区画の賃貸借(作成した契約書の形)貸主は責任を負わないと定める

車を預かる契約(寄託・保管)保管の義務の違反として争われ得る

鍵の受け渡し

区画の賃貸借(作成した契約書の形)しない

車を預かる契約(寄託・保管)預かることがある

月極の駐車場で車の管理を貸主が引き受けないなら、区画の賃貸借であることを契約書で明確にします。

あわせて、区画番号と車両のナンバーを表示し、使用開始前に車種・車両番号などを届け出させ、届出のない車両の駐車を禁止しました(車両を変えるときは期限内に届出)。修理・整備・洗車その他駐車の目的を超える作業も禁止しています。軽貨物の事業者が駐車場を借りる場合は、自動車車庫の整備・管理が事業の基準の一つになっていることもあり(貨物自動車運送事業法25条、36条2項で準用)、どの車をどの区画に置くかを契約で特定しておく意味があります(開業と届出)。

事務所の改訂例 駐車区画の賃貸借契約書

空欄だった数字

出発点賃料の支払日、車両変更の届出期限、解除事由の滞納期間が空欄。(当初の案)
改訂後賃料は毎月末日までに翌月分を支払う、車両の変更は所定の日数以内に届け出る、解除事由の滞納期間は1か月分、と埋めました。

支払日と解除の要件が空欄のままでは、滞納の日にどこから解除できるかが決まりません。

禁止行為

出発点駐車目的を超える作業の禁止などの列挙。(当初の案)
改訂後「他の利用者の車両又は道路を通行する車両の通行・出入りを妨げる態様での駐車」を加えました。

区画からのはみ出しや出入口をふさぐ駐車は、駐車場で最も多い苦情の一つです。

届出のない車両の駐車を禁止しておく意味は、区画にどの車が停まっているかを貸主が把握できることにあります。放置車両や、借主以外の人の車が停められていた場合に、誰に連絡し、誰に責任を求めるかの手がかりになります。軽貨物の事業者が複数の車両を入れ替えて使う場合は、車両を変えるたびに届け出る運用になるので、届出の期限を現実に守れる日数にしておくことも大切です。

修理・整備・洗車その他駐車の目的を超える作業を禁止しているのは、区画が「車を停める場所」として貸されているからです。区画でオイル交換や洗車をされると、油や水が流れ出たり、作業の時間だけ通路がふさがれたりして、他の利用者や近隣との関係に響きます。軽貨物の事業者は区画で荷物の積み替えをしたくなることもありますが、それを認めるかどうかも、禁止行為の書き方で先に決めておきます。

賃料の滞納と無催告解除

駐車場やキッチンカーの賃貸借で「賃料を1か月分滞納したら、催告なしに解除できる」と書く例は多くあります。催告とは、解除の前に「期限までに払ってください」と求めることです。この点については、家屋の賃貸借で、賃料を1か月分でも滞納したときは催告なしに解除できる旨の特約を、催告をしなくてもあながち不合理とは認められないような事情がある場合に無催告で解除できる旨を定めた約定として、その限度で効力を認めた最高裁判所の判決があります(最高裁昭和43年11月21日第一小法廷判決、民集22巻12号2741頁)。この判決は家屋の賃貸借の事案で、「無催告解除の特約があれば常に催告なしで解除できる」とした判断ではありません。駐車場の契約でも、無催告解除の条を置くなら、滞納の期間や回数を具体的に書き、通常は催告を経る運用と組み合わせておくのが無難です。

キッチンカーの賃貸借:車両と設備を特定する

個人が所有するキッチンカーを、別の個人に移動販売・イベント出店の用途で貸す賃貸借契約を作成した案件では、車両名・登録番号・車検の有効期限で車両を特定し、搭載設備(換気扇・シンク・給排水・冷凍冷蔵庫など)も賃貸の対象に含めました。キッチンカーの価値の多くは設備にあるので、設備を対象から漏らすと、故障したときに誰が直すのか、返却時に何を確認するのかが決まらなくなります。使用する地域を限定し、営業終了後は当日中に指定の保管場所へ返還する、保証金を預かる、という骨格です。

キッチンカーの賃貸借で決めたこと
項目作成した契約書の内容
目的物車両名・登録番号・車検の有効期限で特定し、搭載設備も賃貸の対象に含める
使用の範囲移動販売・イベント出店の用途。使用地域を限定。営業終了後は当日中に指定の保管場所へ返還
賃料依頼者との協議を踏まえ、「毎月末日までに翌月分を前払い」から「毎月、当月分を所定の期間内に支払う」形に改めた
保険貸主が自動車保険(対人・対物無制限、人身傷害、車両保険)を契約期間中かける
整備・車検タイヤ・オイル・ワイパーの交換などの通常の整備と車検の費用は貸主の負担。借主の故意・過失による損傷の修理は借主の負担
故障直ちに通知して協議。修理・代替車両の費用負担は発生原因に基づき協議で判断
保証金利息を付けず、借主から賃料への充当を求めることはできない。終了時に通常の損耗を超える損傷や未払がなければ終了後30日以内に返還。控除するときは明細を交付
返還貸主・借主の立会いで状態を確認し、必要に応じて書面・写真で記録
更新・中途解約清掃・保守管理・返却時刻の遵守状況を貸主が合理的に審査し、著しく不適切なら更新を拒絶できる(原則として満了の1か月前までに書面で)。中途解約は1か月前の書面通知で、配達証明郵便など記録の残る方法による

車両リース(車両リースの契約)では借主が保険・整備を負担する形が多いのに対し、このキッチンカーの契約は貸主が保険・整備を負担する型でした。個人が自分の車を貸す場合、車両保険を含めて自分の保険でまかないたいという事情があることが多く、どちらの型でも、誰の保険で何が補償されるのかを契約書と保険証券で一致させておくことが大切です。

イベント出店のときに、貸主も販売する場合

同じキッチンカーの契約には、イベント出店のときに貸主が車両の一部のスペースを使って、自ら又は第三者と連携してドリンクなどの軽飲食物を販売でき、借主は合理的な範囲で協力する、という条がありました。借主の事業を不当に妨げない範囲で、利用方法・販売物品・時間帯を事前に協議・合意し、収益の配分はイベントごとに別に取り決める、借主は衛生・安全の管理と、貸主の販売物品との混同を防ぐ措置をとる、という内容です。車の貸し借りに貸主の営業を同居させる場合の調整の条の例で、これがないと、どちらの売上か、衛生上の事故がどちらの責任か、の区別がつかなくなります。お客様から見れば、同じ車の窓口で売られている物は同じ店の商品に見えます。借主の商品で苦情が出たのに貸主の商品と取り違えられる、あるいはその逆、ということが起こり得るので、混同を防ぐ措置(表示の分け方や販売の場所の区切り)を借主の義務として書いておく意味があります。

ヒヤリングで確かめること キッチンカーを貸す前に確かめること

  1. 貸すのは車両だけですか、搭載設備も含みますか。設備の一覧を作れますか。

    設備を目的物に含めるなら、一覧を別紙にして返却時の確認の基準にします。

  2. 使う地域・出店先・保管場所はどこですか。

    使用地域の限定と、営業終了後の返還場所・時刻を決めます。

  3. 保険は誰の名義で、車両保険まで入っていますか。

    貸主が保険をかけるのか、借主に入らせるのかで、事故のときの請求先が変わります。

  4. 貸主自身もイベントで販売することがありますか。

    あるなら、スペースの利用・収益の配分・衛生管理の分担の条を置きます。

  5. 業として繰り返し有償で貸すことになりますか。

    自家用自動車を業として有償で貸し渡すには、借受人が使用者である場合を除き許可が必要です(道路運送法80条1項)。1台を継続して貸す場合の当てはめも含め、使用者の名義と許可の要否を確かめます。

使用地域を限定し、営業終了後は当日中に指定の保管場所へ返す、という定めにも理由があります。貸主が車両の状態を確認できないまま長く借主の手元にあると、損傷や設備の不具合がいつ生じたのかが分からなくなります。毎日の返還を原則にしておけば、貸主は車両と設備の状態を日々確かめられ、更新のときの審査(清掃・保守管理・返却時刻の遵守状況)の材料にもなります。

故障のときの費用負担を「発生原因に基づき協議で判断する」としたのは、設備の故障が経年によるものか、借主の使い方によるものかを、その場で決めにくいからです。直ちに通知して協議する、という手順を先に置き、原因の判断の材料として、返還時の立会いと写真の記録を残す形にしています。貸主が通常の整備と車検の費用を持つ型なので、借主の故意・過失による損傷の修理だけを借主負担とする線引きと合わせて読みます。

ご相談と回答 キッチンカーの賃貸借

キッチンカーの賃料を、翌月分の前払いではなく当月払いにしたいのですが。

依頼者のご要望を受けて、支払時期を「毎月、当月分を所定の期間内に支払う」形に改めました。借主の売上の入り方に合わせた支払時期にしておくと、滞納の防止にもつながります。支払時期を変えたときは、保証金の額や、滞納による解除の要件との釣り合いもあわせて確かめます。

保証金の精算と、返還時の記録

保証金は、返すときに一番もめる項目です。作成した契約では、保証金には利息を付けないこと、借主の側から保証金を賃料に充てるよう求めることはできないこと、通常の損耗を超える損傷・汚損がなく未払もなければ終了後30日以内に返還することを定め、修理費や原状回復の費用を控除するときは、控除額と算出根拠を書いた明細書を交付し、不足があれば借主が直ちに支払う、としました。「控除できる」とだけ書くのではなく、明細の交付まで義務にしているのは、報酬からの天引きと同じ考え方です(天引き・相殺)。返還の時に立会いで状態を確認し、書面・写真で記録しておけば、通常の損耗か借主の損傷かの区別も後でつけやすくなります。

保証金に利息を付けないこと、借主から保証金を賃料に充てるよう求められないことを書いておくのは、保証金が「最後の精算のための預り金」であることを明確にするためです。借主が手元の資金が苦しいときに「保証金から引いておいて」と言い出すと、契約の途中で保証金が目減りし、返還の時に原状回復の費用を回収できなくなります。充当を求められないと書いておけば、保証金は終了時までそのまま残ります。

中途解約の通知を配達証明郵便など記録の残る方法によるとしたのも、精算と関係します。いつ解約の通知が届いたかで、最後の月の賃料や、保証金の返還の期限の起算日が変わるからです。更新の拒絶を原則として満了の1か月前までに書面で行う、という定めと合わせて、終わりの日を争いなく確定できる作りにしています。

事業の譲渡で車両や駐車場が動く場面でも、同じ視点が役に立ちます。介護事業の事業譲渡契約のレビューでは、代金の支払と、資産・鍵の引渡し、車両の名義変更、賃貸借の切替えを同時に行い、着金の確認をもって引渡しと所有権の移転の効力が生じる形を提案しました。駐車場や保管場所の賃貸借を引き継ぐ場合は、貸主の承諾が要るかを賃貸借の契約書で確かめ、切替えの日を代金の支払と合わせておきます(事業の承継と車両の売買)。

条文の例:駐車場の性質と管理の責任

条文例駐車場賃貸借契約 第◯条(契約の性質)

  1. 本契約は、本区画を自動車の駐車の用に使用させることを内容とする賃貸借契約であり、貸主が車両を預かり保管する寄託契約又は保管契約ではありません。
  2. 借主は、本区画に駐車する車両及び車内の積載物を、自らの責任で管理します。
  3. 貸主は、本区画内で生じた車両の盗難、接触事故、いたずら、損傷その他の損害について、貸主の故意又は重大な過失による場合を除き、責任を負いません。
  4. 借主は、使用開始前に、駐車する車両の車種及び車両番号を貸主に届け出るものとし、届け出た車両以外の車両を本区画に駐車してはなりません。車両を変更するときは、変更の日から◯日以内に届け出ます。

事務所が作成した駐車区画の賃貸借契約書の考え方を整理した例です。3項の「故意又は重大な過失による場合を除き」は、相手方が消費者になる場合も見据えた書き方の例として加えています。

相手方が個人で、事業とは関係なく自家用車を停めるために借りる場合は、消費者契約法が適用されます(同法2条)。事業者の損害賠償の責任の全部を免除する条項は無効になり得る(同法8条1項1号)ため、貸主の責任を一切否定する書き方より、性質の条で「預かっていない」ことを明確にしたうえで、故意・重大な過失の場合を除く形にしておくほうが安定します。軽貨物の事業者が事業のために借りる場合は、事業者どうしの契約になります。

ヒヤリングで確かめること 駐車場の賃貸借契約書を作る前に確かめること

  1. 区画は番号で特定できますか。区画図を別紙にできますか。

    どこを貸したのかを特定します。

  2. 借りる人は、事業のために使いますか、自家用ですか。

    消費者契約法の適用の有無で、免責の書き方が変わります。

  3. 鍵やリモコンを預かったり、車を移動したりすることはありますか。

    預かる運用があるなら、寄託ではないという性質の条と食い違わないよう運用を見直します。

  4. 賃料の支払日、滞納による解除の期間、更新・解約の予告は決まっていますか。

    空欄のまま運用しないようにします。

  5. 洗車・整備・荷物の積み下ろしなど、駐車以外の作業を認めますか。

    禁止するなら禁止行為として列挙します。

キッチンカーの賃料の支払時期と、自動車の有償貸渡し

事務所の改訂例 キッチンカーの賃貸借契約書

賃料の支払時期

出発点毎月末日までに翌月分を前払い。(当初の案)
改訂後依頼者との協議を踏まえ、毎月、当月分を所定の期間内に支払う形に改めました。

借主の売上の入り方に合わせた支払時期にしました。

キッチンカーを業として繰り返し有償で貸す場合、自家用自動車の有償貸渡しの許可(道路運送法80条1項)が問題になります。国土交通大臣は、貸渡しの態様が自動車運送事業の経営に類似していると認める場合を除き、この許可をしなければならないとされています(同条2項)。借受人がその車の使用者である場合は許可が要らないため、1台を継続して貸すなら、車検証上の使用者を誰にするかとあわせて整理します(車両リースと有償貸渡し)。

よくあるご質問

月極駐車場の賃貸借契約書には、何を書けばよいですか?

区画番号と車両のナンバー、使用開始前の車両の届出、賃料の支払日、解除の事由(滞納の期間)、禁止行為を書きます。区画の使用を内容とする賃貸借で車を預かる契約ではないこと、車両と積載物の管理は借主の責任であることも、性質の条として明記します。

駐車場で車が傷つけられたら、貸主の責任になりますか?

契約の性質しだいです。区画を貸すだけの賃貸借で、車両の管理は借主の責任と定めていれば、区画内の盗難・接触・いたずらについて貸主は責任を負わないと定めることができます。車を預かる契約(寄託)にすると、保管の義務が生じます。

賃料を1か月滞納したら、すぐに解除できますか?

無催告解除の特約は、催告をしなくても不合理とは認められない事情がある場合に効力が認められる、とした最高裁判所の判決があります(家屋の賃貸借の事案)。条文に滞納の期間を具体的に書き、通常は催告を経る運用と組み合わせておくのが無難です。

キッチンカーを個人に貸すとき、保険はどちらが入るべきですか?

どちらの型もあり得ます。事務所が作成した契約では、貸主が対人・対物無制限の自動車保険と車両保険をかける型でした。誰の保険で何が補償されるかを、契約書と保険証券で一致させておくことが大切です。

キッチンカーを貸してお金をもらうのに、許可は要りますか?

自家用自動車を業として有償で貸し渡すには、借受人がその車の使用者である場合を除き、国土交通大臣の許可が必要です(道路運送法80条1項)。継続して貸す場合は、車検証上の使用者を誰にするかとあわせて許可の要否を確認します。

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