このページの要点
- 標準運送約款は、運賃(運送の対価)と料金(待機時間料・積込料・取卸料・附帯業務料など)を区別している。契約書でも別の項目として書く。
- 燃料サーチャージは運賃・料金とは別に収受し、賃金・物価の変動による額の見直しは協議を求められる形にする。
- 荷主の資本金や従業員数によって、取適法の特定運送委託や物流特殊指定の規律が及ぶ。物流特殊指定の改正は2027年4月1日に施行されると公正取引委員会が公表している。
- 荷主には物流効率化法の努力義務があり、受渡しの日時の調整や荷待ち時間の記録に協力する条を契約書に置く。
結論:運送契約書は、標準約款を土台に「足すもの」と「外すもの」を決める書面です
メーカー、印刷会社、小売など、自らの事業のために荷物を運ばせる側(荷主)が運送会社と直接結ぶ契約では、書面に入れるべきことは大きく四つに絞れます。一つ目は、運送の対価である「運賃」と、荷待ち・積込み・仕分けなど運送以外の作業の対価である「料金」を分けて書くこと。二つ目は、燃料価格や人件費が動いたときに対価をどう見直すか。三つ目は、荷主の側に及ぶ法令(取適法、物流特殊指定、物資の流通の効率化に関する法律)を前提にした条の置き方。四つ目は、荷物の事故のときの責任をどこに置くかです。
この四つには、いずれも国が公示している標準運送約款に原型があります。そのため、最初に決めるのは「約款どおりにするのか、約款から離れて個別に決めるのか」です。そこを曖昧にしたまま運賃表だけを付けた契約書は、荷待ちが長引いたとき、荷主が頼んでいない作業を運転者が引き受けたとき、燃料が上がったときに、どちらの言い分にも根拠を与えられません。待機の時間の数え方と記録の分担、待機時間料の条文の組み立ては、荷待ち・荷役の記録と待機時間料の契約条項の記事で詳しく説明しています。
- 運賃(運送の対価)と料金(待機・積込み・取卸し・附帯業務など運送以外の対価)は、書面の上で別の項目にする。
- 燃料サーチャージは運賃・料金とは別に収受できるものとして、算式と基準を書く。賃金・物価の変動による見直しは、協議を求められる形にしておく。
- 荷主の資本金や従業員数によっては、取適法(特定運送委託)や物流特殊指定の規律が及ぶ。契約書の条が法令に劣後しないように組む。
- 荷物の事故は、商法の任意規定と約款の定めを出発点に、荷主との契約で責任の範囲と時効・除斥の期間を明示する。
運送会社が元請として協力会社や委託ドライバーに運送を回す場面(再委託)は、再委託と改正貨物自動車運送事業法と、軽貨物の業務委託契約書で扱っています。一般貨物の事業者どうしで傭車(運送を下の運送会社に出すこと)をするときの実運送体制管理簿への協力や運賃の内訳の書き方は、傭車契約の実運送体制管理簿と適正原価の記事で詳しく説明しています。このページは、その上流にある「荷主と運送会社」の契約に絞ります。
標準運送約款と運送契約書の関係
一般貨物自動車運送事業者は、運送約款を定めて国土交通大臣の認可を受けなければなりません(貨物自動車運送事業法10条1項)。認可の基準には、荷主の正当な利益を害するおそれがないこと、運賃・料金の収受と事業者の責任に関する事項が明確であること、そして運賃と料金を区分して収受する旨が明確であることが含まれます(同条2項)。さらに、国土交通大臣が標準運送約款を定めて公示した場合に、事業者がそれと同一の約款を定めれば、認可を受けたものとみなされます(同条3項)。多くの運送会社が標準約款をそのまま使っているのは、この仕組みがあるからです。引越しや宅配便の受付をする事業者が、標準引越運送約款・標準宅配便運送約款と自社の利用規約をどう組み合わせるかについては、引越し・宅配便の運送約款と利用規約の記事で詳しく説明しています。
標準約款には、普通のトラック用の標準貨物自動車運送約款のほか、軽自動車用の標準貨物軽自動車運送約款(平成15年国土交通省告示171号)などがあります。いずれも令和6年国土交通省告示210号による改正を経て、令和6年6月1日に施行されています。なお、貨物軽自動車運送事業者について運送約款の認可(10条)を準用する規定は、貨物自動車運送事業法36条2項の列挙には置かれていません。軽貨物の事業者にとって標準約款は、認可の対象ではなく、契約書を組むときの「ひな形」としての意味が強いということです。
標準約款に書かれていない事項は法令または一般の慣習によること、法令に反しない範囲で特約の申込みに応じることがあることは、標準貨物軽自動車運送約款の2条に置かれています。約款の外側にある法令の代表が、商法の物品運送の規定です。物品運送契約は、運送人が荷物を受け取って運び、荷受人に引き渡すことを約し、荷送人が結果に対して運送賃を支払うことを約して成立します(商法570条)。運送人は、受取から引渡しまでの間の滅失・損傷・延着について、注意を怠らなかったことを自ら証明しない限り責任を負い(同法575条)、高価品は荷送人が種類と価額を通知しなければ責任を負わず(同法577条)、損傷・一部滅失の責任は荷受人が異議なく受け取ると原則として消えます(同法584条)。運送人の責任は、引渡しがされた日(全部滅失の場合は引渡しがされるべき日)から1年以内に裁判上の請求がされないと消滅します(同法585条1項)。これらの規定のうち、契約や約款の定めで動かせる部分と動かせない部分は、条文と所管官庁の資料で確認が必要です。契約書では、動かせる部分を意識して書きます。
運送契約書の組み方を二つの型で比べる
土台
約款準拠型標準運送約款(またはそれと同一の自社約款)を適用し、運賃表・料金表と運送申込書・運送引受書を組み合わせる。
個別契約書型約款を前提にしながら、当事者間の基本契約書に運賃・料金、見直し、責任、協力義務を書き込む。
向く場面
約款準拠型荷主が多数で、取引が単発・不定期のとき。運送のたびに申込書と引受書を交わす。
個別契約書型継続的に同じ荷主と取引し、拠点間や定時の運行が中心のとき。
運賃・料金
約款準拠型運賃料金表に従う。料金の種類は約款が列挙している。
個別契約書型別紙の運賃表・料金表で、月額や走行距離などの形を個別に決める。
責任
約款準拠型約款の責任の規定(過失の証明、高価品、時効・除斥の期間)が基本になる。
個別契約書型約款と異なる上限や期間を置くなら、荷主の明示の合意が必要。
注意
約款準拠型約款が荷主の手元にあるか、契約の中でどう引用されているかを確かめる。
個別契約書型約款の趣旨(運賃と料金の区分など)に反する書き方をしていないかを点検する。
どちらの型でも、運送の都度の注文書や引受書の位置づけ(基本契約の個別契約に当たるのか)を決めておきます。
運賃と料金を分けて書く
運送契約の対価は、運賃だけではありません。標準約款は「運賃」と「料金」を区別しています。運賃は運送の対価のみ、料金は運送以外の役務などの対価です。たとえば標準貨物軽自動車運送約款は、荷送人または荷受人の責による待機に対して待機時間料を収受すること(34条)、積込みまたは取卸しを引き受けた場合には別に定める料金または実費を収受すること(60条)、附帯業務を引き受けた場合も同様であること(61条)を、それぞれ定めています。積込み・取卸しや附帯業務は、運送業務等の章とは別の章に置かれています。附帯業務のうち荷物の保管を引き受ける場合は、運送とは別に預かる契約の問題が生じるため、倉庫・保管の寄託契約と倉庫業法の記事で詳しく説明しています。
| 項目 | 何の対価か | 書くこと |
|---|---|---|
| 運賃 | 運送そのものの対価 | 区間、車種・重量・個数などの区分、単価。月額固定のときは対象となる運行の範囲 |
| 待機時間料 | 荷送人または荷受人の責による待機 | 無料とする待機時間、超えた分の単位と単価、時間の記録方法 |
| 積込料・取卸料 | 荷物の積込み・取卸しの作業 | 作業の内容、予定の作業時間、単価。運転者が行うのか荷主側が行うのか |
| 附帯業務料 | 荷造り、仕分、保管、検収及び検品、横持ち・縦持ち、棚入れ、ラベル貼り、はい作業、品代金の取立てなど | 引き受ける作業の別紙、単価、実費精算にするときの基準 |
| 利用運送手数料 | 他の運送事業者の運送を利用するときの手数料 | 利用する場合に実運送事業者の名称を荷主に通知すること、手数料の額 |
| 燃料サーチャージ・有料道路利用料 | 運賃・料金とは別に収受するもの | 算式と基準価格、有料道路の料金を実費とするか定額とするか |
料金を税込で書くか税別で書くかは、書面で明らかにします。
この区分の意味は、荷主の現場で起きる「頼まれて、なんとなくやってしまう作業」を見ると分かります。運転者が荷物を倉庫の棚まで運び入れる、納品先で検品に立ち会う、荷主の都合で数時間待たされる。運賃の中に含まれているのか、別に料金が発生するのかが書かれていないと、運送会社は請求しにくく、荷主は予算を組めません。貨物自動車運送事業法12条1項は、真荷主と一般貨物自動車運送事業者が運送契約を結ぶときに、運送の役務の内容と対価、運送以外の役務が含まれるときはその内容と対価を書面に記載して交付するよう求めています(書面の記載事項は再委託と改正貨物自動車運送事業法で整理しています)。
条文例運送契約 第◯条(運賃及び料金)の書き方の例(一般的な例)
- 運賃は運送の対価とし、別紙の運賃表による。
- 次の各号に掲げるものは運賃に含まれず、別紙の料金表により別に請求する。(1) 荷主または荷受人の事情による待機(無料の待機時間◯分を超えた部分を、◯分単位で計算する。) (2) 貨物の積込みまたは取卸し (3) 荷造り、仕分、検品その他の附帯業務
- 前項の作業は、あらかじめ書面で依頼されたものに限るが、運送会社が荷主の求めに応じて引き受けたときは、書面の有無にかかわらず前項の料金を適用する。
- 運賃、料金その他この契約に基づく金額は、いずれも消費税及び地方消費税を含まない額とする。
第4項は税別とする例です(税込とする場合は「含む額」とします)。第3項は、運送会社が荷主の求めに応じて作業を引き受けた場合にも料金が発生することを、契約書の中で明示する書き方の例です。
書き方の例(一般的な例) 運賃一式の書き方
運賃の範囲
含む作業を広く書くほど、荷主は料金を想定できず、運送会社は追加作業の請求根拠を失う。
荷待ち
待機の原因を荷主側に置くことで、料金が発生する条件が明確になる。
付帯作業
作業の内容と時間が特定されていないと、後から料金の額で争いになる。
運送の中止があったときの手数料も、約款に目安があります。標準貨物軽自動車運送約款では、荷送人が運送引受書に記載した集貨予定日時の3日前までに中止したときは中止手数料を請求しません。それより後は、荷送人の責任によらない事由による場合を除き、運送引受書に記載した運賃・料金等に対して、集貨予定日時の前々日は20パーセント以内、前日は30パーセント以内、当日は50パーセント以内で収受できます(同約款38条)。これは約款が示す上限の目安です。個別の契約書で別の定めを置くときは、荷主が「いつまでなら無料か」を読み取れるように書きます。
燃料サーチャージと運賃の見直し
標準約款は、運賃・料金等(燃料サーチャージを除く)を、運送会社が別に定める運賃料金表によると定めたうえで、調達する燃料の市場価格に応じて、別に定めるところにより燃料サーチャージを収受するとしています。また、賃金水準や物価水準の変動により運賃・料金等の額が不適当になったと認めるときは、荷送人と運送会社のどちらからでも、額の変更の協議を求めることができるとされています(標準貨物軽自動車運送約款32条)。
約款は、燃料サーチャージを収受することは定めていますが、基準となる価格や算式の細部は「別に定めるところ」に委ねています。契約書では、基準と算式を取引の実態に合わせて固定しておくと、価格が動くたびの交渉を避けられます。算式を置くときは、走行距離、燃費、燃料価格の上昇額をどの資料で確認するのかを決めておかないと、請求のたびに数字の根拠を問われることになります。
燃料サーチャージの運用の流れ(契約書で決めておく順序)
- 1 基準価格を決める燃料価格がいくらまでは運賃に含み、いくらを超えた部分をサーチャージとして別に収受するかの基準を、金額で書く。
- 2 参照する価格を決める調達価格を何で確認するか(公表されている指標、運送会社の仕入れ価格など)と、確認する日を書く。
- 3 算式を書く走行距離、燃費、燃料価格の上昇額を使う算式を条文または別紙に書き、燃費の確定方法も決める。
- 4 通知と適用月を決めるいつ、どの方法で荷主に通知し、どの月の運行から適用するかを書く。
- 5 協議の窓口を置く算式で吸収できない事情(人件費・物価の変動)が生じたときの協議の求め方、応じる期限、説明と資料の提供を書く。
算式を使わない取引でも、運賃改定の協議を求める手続の条は残しておきます。
条文例運送契約 第◯条(燃料サーチャージ及び運賃の見直し)の書き方の例(一般的な例)
- 燃料サーチャージは、運賃及び料金とは別に、別紙の算式により算定して請求する。基準価格及び参照する価格の指標は別紙に定める。
- 運送会社は、算定の根拠となる走行距離及び燃費を、請求書とあわせて荷主に通知する。
- 賃金水準、物価水準、燃料価格その他の事情の変動により、運賃または料金の額が不適当となったと認めるときは、いずれの当事者も他方に対し、額の変更の協議を求めることができる。協議を求められた当事者は、誠実にこれに応じ、必要な説明及び資料を提供する。
取適法の対象になる取引では、見直しの協議はさらに強い意味を持ちます。委託事業者は、中小受託事業者の給付に関する費用の変動その他の事情が生じ、中小受託事業者が代金の額について協議を求めたのに、協議に応じず、または必要な説明や情報の提供をせず、一方的に代金の額を決めてはなりません(取適法5条2項4号。特定運送委託にも適用されます)。燃料の高騰とフリーランス法・取適法の関係はフリーランス法・取適法と運送の委託で扱っています。ここでは、協議の条が契約書にあることが、法令の求めと同じ方向であることだけを押さえておきます。
荷主に及ぶ規制:取適法・物流特殊指定・独占禁止法
運送契約では、荷主の側が優越的な立場に立ちやすく、運送会社の側は断りにくい構造があります。そのため、荷主に対する規律が複数用意されています。どの規律が働くかは、取引の型で決まります。
| 取引の型 | 主な規律 | 契約書で見ること |
|---|---|---|
| 荷主が自ら販売・製造・修理・作成する物品を、取引の相手方へ届ける運送を委託する | 取適法の特定運送委託(2条5項)。委託事業者が資本金3億円超で、受託側が個人または資本金3億円以下の法人など(2条8項)。 | 支払期日(3条)、取引条件の明示(4条)、減額・買いたたき・協議拒否などの禁止(5条)に反しない書き方か |
| 取適法の類型に当たらない運送(たとえば自社の拠点間の移動)を、継続して委託する | 物流特殊指定(独占禁止法2条9項6号に基づく指定)と、優越的地位の濫用の規定(同法2条9項5号、19条) | 取引上の地位が優越している荷主が、不当な追加作業・やり直し・減額を求める余地がないか |
| 荷主(真荷主)と一般貨物自動車運送事業者との間の運送契約 | 貨物自動車運送事業法12条の書面、64条の荷主の責務、65条の荷主への勧告 | 運賃・料金を書面で交付し、運送事業者が法令を守れるよう荷主が配慮する体制か |
どの類型に当たるかは、取引ごとに判断が必要です。取適法の対象かどうかは、委託の内容と、荷主・運送会社の資本金(または従業員数)で決まります。
取適法の枠組みは、2026年1月1日の施行で「下請法」から名称を改め、運送の分野では「特定運送委託」が新たに加わりました。事業者が業として行う販売などの目的物たる物品を、取引の相手方に運送する行為を、他の事業者に委託することが対象です(取適法2条5項)。資本金による区分だけでなく、常時使用する従業員の数が300人を超える委託事業者から、300人以下の事業者への委託も対象になります(同条8項5号、9項5号)。支払期日は、運送の役務の提供を受けた日から60日以内でできる限り短く定める必要があり(同法3条1項)、取引条件は書面または電磁的方法で直ちに明示します(同法4条1項)。
取適法の規律が及ばない荷主との取引にも、独占禁止法の優越的地位の濫用の規定が働きます。自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、不利益を与える行為が対象です(同法2条9項5号、19条)。荷主と物流事業者の関係に特化したルールが、公正取引委員会の告示である物流特殊指定です。
物流特殊指定は、2027年4月1日に改正が施行されます
物流特殊指定(荷主と物流事業者の取引に関する公正取引委員会の指定)を改正する告示は、令和8年6月17日に公正取引委員会が公表し、令和9年(2027年)4月1日に施行されると案内されています(公正取引委員会の報道発表で確認できます)。それまでは現行の指定が適用されます。改正後の名称、対象となる取引の範囲、規模の基準、禁止される行為の細部は、公正取引委員会が公表している告示の本文と資料で確認が必要です。このページでは、改正の内容を一般論としても断定しません。
運送契約の側でできることは、改正の内容に関わらず共通しています。追加の作業や待機が生じたときに、だれが依頼でき、その料金をだれが負担するのかを、契約書の条として書いておくことです。契約にない荷下ろしや検品、荷待ちの長時間化が運送事業者の負担になりやすいことは、荷主と運送会社の間に届け先が加わる取引で特に問題になります。発荷主・運送会社・届け先の間で、追加作業の依頼の窓口と費用の負担を決めておくと、紛争の予防になります。
荷主の責務と物資の流通の効率化に関する法律
荷主の責務は、独占禁止法だけではありません。貨物自動車運送事業法64条は、荷主に対し、貨物自動車運送事業者が同法や同法に基づく命令を守って事業を行えるよう、必要な配慮をすることを求めています。65条は、運送事業者の違反が荷主の指示に基づくことが明らかであるなど、主として荷主の行為に起因すると認められる場合に、国土交通大臣が荷主に再発防止の措置を勧告できることを定めています。
さらに、物資の流通の効率化に関する法律(物効法)が、荷主に具体的な努力義務を置いています。自らの事業に関して継続して貨物自動車運送事業者等に運送を行わせる契約を結ぶ荷主(第一種荷主)は、運転者の荷待ち時間等の短縮と、運転者一人当たりの一回の運送ごとの貨物の重量の増加を図るため、次の措置を講ずるよう努めなければなりません(同法42条1項)。
- 貨物の運送の委託から受渡しまでの間に、運送事業者が積合せなどで一回の運送の重量を増やせるように、受渡しの日時・時間帯を決めること。
- 受渡しの日時・時間帯を決めるとき、荷役ができる車両台数を超えて一度に多数の貨物自動車が到着しないようにすること。
- 運転者に荷役等を行わせる場合に、パレットなどの荷役の効率化に資する輸送用器具を利用できるようにするなど、荷役等を省力化する措置を講ずること。
「荷待ち時間」とは、運転者が集貨・配達の場所やその周辺で、荷主その他の者の都合により貨物の受渡しのために待機した時間をいいます(同法30条4号)。短縮の対象となるのは、荷主が管理する施設(または荷主と寄託契約を結んだ者が管理する施設)での荷待ちです(同法42条2項)。運送事業者の側にも、一回の運送の貨物の重量を増やすために輸送網の集約や配送の共同化などを図る努力義務があります(同法34条)。
第一種荷主のうち、年度の貨物の合計の重量が9万トン以上の者は、荷主の事業を所管する大臣から特定荷主(特定第一種荷主)に指定されます(同法45条1項、物資の流通の効率化に関する法律施行令6条3項)。指定の前でも、前年度の重量が基準以上であれば届出が必要です(同法45条2項)。特定荷主は、中長期的な計画の作成・提出(同法46条)と、物流統括管理者の選任(同法47条)が義務づけられ、状況が著しく不十分だと認められれば勧告、公表、命令の対象になり得ます(同法49条)。多くの中小の荷主にとっては、特定荷主の義務ではなく、第一種荷主としての努力義務(同法42条)が現実の課題になります。
条文例運送契約 第◯条(荷待ち・荷役の削減への協力)の書き方の例(一般的な例)
- 荷主は、貨物の受渡しの日時または時間帯を事前に運送会社へ通知し、運送会社の到着が特定の時間に集中しないよう、予約その他の調整を行う。
- 運送会社は、貨物の受渡しの場所における到着時刻、荷役の開始・終了時刻及び出発時刻を記録し、荷主から求められたときは、その記録を提供する。荷主は、自ら管理する施設における待機及び荷役の時間を記録する。
- 荷主は、運送会社の運転者が荷役を行う場合には、パレットその他の荷役を効率化する器具を利用できるようにし、荷役の方法をあらかじめ運送会社に示す。
- 第◯条の無料の待機時間を超えて待機が生じた場合は、第1項及び第2項の記録に基づき、第◯条の待機時間料を請求することができる。
時間の記録を残すことが、待機時間料の請求根拠と、荷主側の改善の材料の両方になります。
書面の流れと、荷物の事故の責任をどこに置くか
標準貨物軽自動車運送約款は、運送を申し込む者が運送申込書を提出し、運送会社が申込者との協議により運送を引き受けるときは運送引受書を交付すると定めています(6条・7条)。電磁的方法による提供も認められています。運送申込書には、荷物の品名・重量、集貨と配達の希望日時、運賃・料金等の支払方法、積込みや附帯業務を委託するか、高価品の種類と価額などを記載し、運送引受書には、集貨・配達の予定日時と、運賃・料金等の額を記載します。これらの記載事項は、貨物自動車運送事業法12条の書面や、取適法4条の明示事項と重なる部分が多く、書式を1つにまとめて兼ねる運用が考えられます。
運送の依頼から請求までの書面の流れの例
- 見積り・契約の締結運賃表・料金表、燃料サーチャージの算式、見直しの条を含む基本契約または約款の適用を確認する。
- 運送申込書荷送人が、貨物の品名・重量・個数、集貨と配達の日時、積込みや附帯業務を委託するか、高価品の価額などを書いて提出する。
- 運送引受書運送会社が、予定日時と運賃・料金等の額を書いて交付する。利用運送を行うときは、実運送事業者の名称等をあらかじめ荷送人へ通知する。
- 運行・記録到着時刻、荷役時間、待機時間、事故の有無を記録する。
- 請求・精算運賃、料金、燃料サーチャージ、有料道路利用料を区分して請求する。
なお、標準貨物軽自動車運送約款は、運送会社が他の貨物自動車運送事業者の運送を利用する場合に、あらかじめ荷送人へその事業者の商号または名称等を通知する旨と、利用運送の手数料を収受する旨を定めています(17条)。荷主との契約の中で、下請に回してよいか、回すときに荷主へ何を伝えるかを書く条は、契約終了・直接取引の禁止の議論ともつながります。
荷物の事故は、荷主との契約で最も争いになりやすい論点です。賠償の範囲や保険、元請が荷主に払った賠償の転嫁は、事故・賠償と保険で詳しく扱っています。ここでは、荷主との契約で置いておきたい項目だけを挙げます。
- 責任の始期と終期(受取の時から引渡しまで。標準約款では貨物を受け取った時に責任が始まります。)
- 損害額の算定の基準(引渡しがされるべき地・時における貨物の価額。商法576条の市場価格と、標準約款の考え方)
- 延着の賠償の上限(標準貨物軽自動車運送約款には、延着の賠償を運賃・料金等の総額までとする定めがあります。)
- 高価品の扱い(種類・価額の通知がなければ責任を負わない。商法577条)
- 通知と請求の期間(異議なく受け取ったときの責任の消滅と、引渡しがされた日から1年で責任が消える期間。商法584条・585条)
- 荷主・荷受人の申告の誤りによる損害の負担(品名・重量・価額が不実だったとき。標準貨物軽自動車運送約款43条)
これらを個別の契約で動かすときは、約款の定めより荷主に不利な内容になっていないかを確かめます。運送会社の責任を過度に重くすると、運送会社が入る保険の限度を超える請求を引き受ける契約になり、実際には回収できない約束が並ぶことになります。逆に、責任を過度に軽くすると、荷主の正当な利益を害する特約になり、約款の趣旨(荷主の正当な利益を害するおそれがないこと。10条2項1号)にも合いません。
ヒヤリングで確かめること、起きがちなこと
ヒヤリングで確かめること 荷主と運送会社の運送契約を作る前に
この取引は、荷主が販売・製造した物品を相手方に届ける運送ですか。それとも拠点間の移動など、別の運送ですか。
取適法の特定運送委託に当たるか、物流特殊指定や優越的地位の濫用の規定で見るかが分かれる。
荷主と運送会社の資本金(または常時使用する従業員の数)は、それぞれどのくらいですか。
取適法の委託事業者・中小受託事業者に当たるかを判断する基礎になる。
運転者が運送以外にしている作業(積込み、取卸し、検品、仕分け、棚入れなど)はありますか。
運賃とは別の料金の項目として契約書に書くかを決める。
荷待ちが長くなる場所と時間帯はありますか。待機の記録はだれがどう残しますか。
無料の待機時間と待機時間料の条件を決め、請求の根拠を残す。
燃料の調達価格はどの指標で確認しますか。基準価格はいくらにしますか。
燃料サーチャージの算式と見直しの手続を固定する。
取引は継続的ですか、単発ですか。運送のたびに申込書・引受書を交わしますか。
約款準拠型か個別契約書型か、個別契約の成立の仕方を決める。
運送中の荷物の価額と、運送会社が加入している保険の内容はどうなっていますか。
責任の範囲と保険の限度に隙間が生じていないかを確かめる。
運送を他の事業者に回すことはありますか。回すとき、荷主に何を知らせますか。
再委託の条と、実運送事業者の通知の扱いを決める。
よくあるご質問
標準運送約款を使わずに、独自の運送契約書だけで取引してよいですか?
一般貨物自動車運送事業者は運送約款を定めて認可を受ける必要があり、標準運送約款と同一の約款にすれば認可を受けたものとみなされます(貨物自動車運送事業法10条)。個別の契約書を結ぶことは妨げられませんが、約款の趣旨である運賃と料金の区分や、責任に関する定めの明確さに反しない形にするのが基本です。軽貨物の事業者には10条は準用されませんが、標準貨物軽自動車運送約款がひな形として公示されています。
荷待ちが長引いたり、頼まれていない作業をしたりしたときの料金は、請求できますか?
標準約款では、荷送人または荷受人の責による待機に待機時間料、積込み・取卸しや附帯業務に別の料金を収受すると定めています。標準貨物軽自動車運送約款は、積込み・取卸しや附帯業務を引き受けた場合に、別に定める料金または実費を収受すると定めています。ただし、個別の契約書で別段の定めがあるときは、その定めと整合する形で請求することになるため、料金の種類と単価、無料の待機時間を契約書に書いておくと請求しやすくなります。
燃料サーチャージは、契約書に書いていなくても請求できますか?
標準約款は、燃料サーチャージを運賃・料金とは別に収受すると定めています。契約書がその約款を適用しているなら根拠になりますが、約款を適用しない契約では、算式と基準価格を書いておかないと、額をめぐって争いになりやすくなります。運賃・料金の額が賃金水準や物価水準の変動により不適当になったときに、協議を求められる条もあわせて置くのが一般的です。
荷主が取適法の対象になるのは、どんな場合ですか?
取適法の特定運送委託は、事業者が業として行う販売、請け負う製造・修理の目的物たる物品などを、取引の相手方へ運送する行為を他の事業者に委託する場合です(2条5項)。委託事業者が資本金3億円超で受託側が個人または資本金3億円以下の法人、または委託事業者が資本金1千万円超3億円以下で受託側が1千万円以下、あるいは従業員数300人超と300人以下の組合せなどが対象です(2条8項)。自社の拠点間の移動のような運送は、この類型に当たらないことがあります。
物流特殊指定が改正されたと聞きました。いつから変わりますか?
物流特殊指定の改正は、令和9年(2027年)4月1日に施行されます。施行までは現行の指定が適用されます。改正の具体的な内容は、公正取引委員会が公表している告示の本文と資料で確認が必要です。
あわせて読みたいページ
本ページは一般的な情報提供です。届出・許可・登録の運用は、所管の行政機関によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月22日)。判例は裁判所ウェブサイトの裁判例検索で確認したものに限って掲載しています。参考: e-Gov法令検索 / 物流・自動車局(国土交通省) / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会) / 裁判所ウェブサイト