このページの要点
- 担当店舗・曜日・開始時刻・終了の時点を契約書に残す。『全配送完了まで』は、終わりが不確定になる。
- 置き配は顧客が指定した方法に限り、引渡しの完了の時点と、完了後の紛失・盗難の分担、設置写真などの記録の保存を同じ条に書く(商法575条・584条)。
- 冷蔵・冷凍品は、保冷資材と車両の設備を誰が用意するかで責任の型を選び、『最善を尽くす』の中身を具体化する。
- 代引金は委託者に引き渡す義務があり(民法646条1項)、釣銭は預かりものとして別に管理し、入金と返還の期限を現実的に決める。
結論:店舗で買った商品を顧客に届ける契約は、「誰の荷物が、どこで引き渡されて終わるか」を先に決める
スーパーやドラッグストアなどの店舗が、ネットで受けた注文や店頭で購入した商品を自宅まで届ける「お買い物便」「ネットスーパー」の配送は、店舗が配送を外部の運送事業者に任せることで成り立つことがあります。この配送を受ける事業者(受託者)と店舗(委託者)の契約書では、宅配便の契約書にはあまり出てこない論点が重なります。担当する店舗や曜日が変わること、業務の終わりが配送の進み具合で決まること、置き配をした後の紛失や盗難、冷蔵・冷凍品の品質劣化、代金引換の現金と釣銭の預かり、日当と件数に応じた加算といった点です。
本ページは、店舗の配送を受託する運送事業者(多くは貨物軽自動車運送事業の届出をした事業者)と、委託する店舗側の双方が、契約書に何を書いておくべきかを整理した一般的な解説です。結論を先に言うと、①担当店舗・曜日・業務時間と終了の時点、②置き配の可否と、置き配の後の責任の分担、③冷蔵・冷凍品について受託者が負う義務の線、④代引金と釣銭の預かりと返還の期限、⑤日当制と件数加算、繁忙期の増便、燃料価格の変動のときの見直し、の5点を決めずに「配送業務を委託する」とだけ書くと、トラブルの多くがその書かれていない部分から起きます。
荷物事故や交通事故の賠償と保険の一般論は事故と保険、個人ドライバーに委託する契約書の骨格は軽貨物の業務委託契約書で整理しています。本ページはそれらを前提に、店舗の宅配に特有の部分に絞ります。
当事者の整理と、担当店舗・曜日・業務時間の書き方
最初に、誰が誰に何を頼んでいるのかを整理します。店舗は商品を顧客に販売した売主で、受託者に配送を委託する荷送人にあたります。受託者は運送人、商品を受け取る顧客は荷受人です。商法は、運送人は運送品の受取から引渡しまでの間に運送品が滅失・損傷し、または延着したときは、注意を怠らなかったことを証明しない限り損害を賠償する責任を負うと定めています(商法575条)。契約書に何も書かなければ、受託者はこの原則どおり、「受取から引渡しまで」の間の事故について責任を負います。以下の論点の多くは、この「引渡し」がどの時点か、そして原則をどう修正するかの話です。
委託元が事業者で、受託者が個人または小規模な法人のとき、店舗が販売した商品を購入者へ運ぶ運送の委託は、取適法(中小受託取引適正化法)の「特定運送委託」に当たり得ます(同法2条5項)。委託事業者に当たるかは、資本金(出資の総額)や従業員の数による区分で決まります(同条8項)。区分と支払期日などの規定はフリーランス法・取適法で整理しているので、ここでは契約書の作り方に必要な点だけ、報酬の節で触れます。
受託者が届出をしていることも、契約書の前提です。貨物軽自動車運送事業は国土交通大臣への届出が必要で(貨物自動車運送事業法36条1項)、届出のない者に貨物の運送を委託することは禁止されています(同法65条の2第3号)。店舗側は、契約の前に届出の事実を確認し、契約書に「受託者は貨物軽自動車運送事業の届出を行っていること、及び届出が失効・変更されたときは直ちに通知すること」を表明保証として書きます(詳細は開業と届出)。
担当店舗と曜日の特定は、運用の詳細になりがちですが、契約書本体に残すことをおすすめします。曜日ごとに店舗が違う場合、配置は変更の必要が生じやすいため、本文には『別表の配置による』とし、変更は『事前に協議し、書面(メール等の記録の残る方法を含む)で合意する』と書きます。口頭の指示だけで運用が変わると、報酬の前提になる業務の内容が変わってしまい、後で業務の範囲や報酬をめぐる紛争になります。
| 項目 | 書き方の例 | 書かないとどうなるか |
|---|---|---|
| 担当店舗 | 別表の曜日配置。変更は書面で事前協議 | 口頭の指示で運用が変わり、報酬の前提が崩れる |
| 業務開始時刻 | 『各配送日の○時○分から』 | 積込み・待機の時間が業務に含まれるか分からない |
| 業務終了の時点 | 『全配送の完了をもって終了』とする場合、完了の定義(最後の顧客への引渡しの記録時など)を書く | 終わりが定まらず、長時間化と、労働者性の問題を招く |
| 顧客不在・再配達 | 持戻りの扱い、再配達の回数と費用、保管の方法 | 戻した荷物の保管と責任の所在が不明になる |
| 車両・設備 | 受託者の車両か店舗の貸与か。保冷資材・端末・釣銭の用意は誰か | 冷蔵品の劣化や端末の紛失の責任が曖昧になる |
業務時間を『全配送完了まで』とする書き方は、終了の時点が不確定のため、受託者にとっては拘束時間が読めないという問題があります。開始時刻を決めたうえで、終了は配送件数に応じた見込みの時間を示し、見込みを大きく超える延長があるときは協議する、とする方法があります。また、開始時刻・終了時刻・担当店舗がすべて委託者の指示で決まり、受託者が配送の順序も変えられない状態では、受託者が個人事業主の場合に労働者性が疑われる事情になります。判断の物差しはドライバーの労働者性で整理しています。
置き配の可否と、置き配の後の紛失・盗難・毀損の責任
置き配とは、顧客の立会いなしに、あらかじめ指定された場所(玄関前、宅配ボックス、ガスメーターボックスなど)に配送物を置いて引渡しとする方法です。契約書で最初に決めるのは、置き配をそもそも認めるか、認めるならどの商品・どの場所に限るかです。経済産業省と国土交通省は、2020年3月31日に「置き配の現状と実施に向けたポイント」を公表しており(両省の報道発表で確認できます)、置き配で運送人の責任が完了する引渡し方法の整理などが論点になっています。契約書では、引渡しの方法を当事者間で明確に合意しておくことが出発点であり、置き配の方法は顧客が指定した方法に限る、顧客の指定がないときは置き配をしない、と書くのが基本です。
責任の分担は、置き配の「引渡し」がいつ完了するかで決まります。ここで商法が関係します。運送人の責任は、荷受人が異議をとどめないで運送品を受け取ったときには消滅するとされています(商法584条1項、直ちに発見できない損傷や一部滅失は引渡しの日から2週間以内に通知すれば別)。置き配では、荷受人が「受け取った」と言える時点が曖昧です。顧客が帰宅して初めて荷物に気づく時間差があり、その間の盗難や雨濡れが誰の責任かが問題になります。契約書では、置き配をもって引渡しが完了した、と合意として書き、完了の後の紛失・盗難・毀損は店舗側の責任とし、受託者に故意または重大な過失があるときは例外とする、という分け方があります。店舗側からは、顧客に対して引渡しが完了したと言い切れるかが気になるところです。そこで、顧客向けの利用規約にも、置き配の場合は設置した時点で引渡しとなる、と同じ内容を書いておきます(運送人と荷送人の契約は、顧客との契約とは別なので、顧客向けの約束と食い違わないようにするためです)。
書き方の例(一般的な例) 置き配後の責任の条
責任の分担
一方に全部寄せる書き方は、置き方が不適切だったときの責任を曖昧にします。指示違反を例外にして、受託者の注意義務を残します。
記録
引渡しの完了を証明できる記録がないと、責任の分担の条が機能しません。何を、いつまで、誰が持つかを決めます。
置き配をしない場合
置き配の対象を商品ごとに絞ると、事故の起きやすい場面を避けられます。
条文例置き配による引渡し
- 乙は、顧客が置き配を指定した場合に限り、顧客が指定した場所に配送物を置くことにより、引渡しを行うことができる。顧客の指定がない場合、又は指定の場所が安全に置ける場所でない場合は、置き配を行わず、甲に連絡して指示を受ける。
- 置き配により配送物を引き渡したときは、乙は設置状況を示す写真その他の記録を作成し、第○条の期間これを保存する。乙は、甲から請求があったときは、速やかに記録の閲覧又は写しの提供に応じる。
- 置き配による引渡しの完了後に生じた配送物の紛失、盗難、毀損その他の損害については、乙に故意又は重大な過失がある場合を除き、甲が責任を負う。乙が前項の記録を作成しなかったときは、乙の責任が否定されない。
『引渡しの完了』の時点と、記録を作らなかったときの扱いを、同じ条に書いておくのがポイントです。
設置写真や配達記録は、顧客の住所、氏名、住居の外観が写り込む個人情報にあたり得ます。店舗(委託者)が個人データの取扱いを委託する場合、委託先に対する必要かつ適切な監督が求められ(個人情報保護法25条)、個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じる義務もあります(同法23条)。契約書には、記録は配送の証明に必要な範囲でのみ撮影・保存する、撮影の際に表札や他人の顔・車両番号が写らないよう注意する、保存期間が終わったら削除する、スマートフォンなどの端末が紛失したときは直ちに連絡する、といった取扱いのルールを入れます。
冷蔵・冷凍品の品質劣化と、温度管理の義務の線
食品を扱う配送では、品質劣化が最も争われやすい損害です。冷蔵品や冷凍品が溶けた、傷んだ、という主張に対して、受託者がどこまで責任を負うのかを、契約書で決めておく必要があります。運送品の損傷による損害賠償の額は、引渡しがされるべき地及び時における運送品の市場価格によって定まり(商法576条1項)、運送人の故意または重大な過失によって損傷が生じたときは、この算定の規定は適用されません(同条3項)。つまり、契約書に何も書かなければ、品質劣化についても、受託者は『注意を怠らなかったことを証明できない限り』責任を負う(商法575条)という原則が働きます。
契約書で整理すべきことは次の三つです。第一に、「冷蔵・冷凍品」とは何を指すか(温度帯の定義、氷温・冷蔵・冷凍の区別)。第二に、受託者が負う義務の中身です。「温度管理に最善を尽くす」とだけ書くと、何をすれば義務を果たしたことになるかが分かりません。保冷バッグや保冷剤の用意は誰がするか、積込みから引渡しまでの時間の目安、車内での保管の方法、顧客が不在のときの待機時間と持戻りの扱いなどを具体化します。荷主の施設での待機を記録して待機時間料に結びつける考え方は、荷待ち・荷役の記録と待機時間料の契約条項の記事で詳しく説明しています。第三に、責任の線です。受託者に故意または重大な過失があったときを除いて、品質劣化による損害は委託者が負担する、とする書き方が一つの方法です。その場合でも、受託者が決められた保冷の手順を守らなかった、顧客の不在を理由に長時間車内に放置した、といった事情は、受託者の落ち度として別に扱う余地を残します。
冷蔵・冷凍品の責任の分け方
責任の基準
受託者の責任を軽くする型故意又は重大な過失がある場合を除き、品質劣化は委託者の負担とする
受託者が手順を守る型手順を守ったことを受託者が示せれば免責。守らなかった場合の損害は受託者の負担
義務の中身
受託者の責任を軽くする型『可能な範囲で最善を尽くす』
受託者が手順を守る型保冷資材の使用、積込みから引渡しまでの時間、車内保管の方法、温度の記録を具体的に列挙する
向いている場面
受託者の責任を軽くする型店舗側が梱包し、保冷資材や車両の設備を用意する場合
受託者が手順を守る型受託者が保冷設備のある車両や資材を用意し、品質の管理を任される場合
注意点
受託者の責任を軽くする型最善を尽くすの中身を決めないと、義務の有無が争われる
受託者が手順を守る型手順の記録を取る負担が増える。記録がないと免責されない
どちらの型にするかは、保冷資材と車両の設備を誰が用意するかで決まります。用意する側が管理の責任を負う、と考えると整理しやすくなります。
賠償の範囲も決めておきます。冷蔵・冷凍品の損害は、商品の仕入価格や販売価格の範囲に限る、顧客に対する返金や再配達の費用までは含めない、といった線を書かないと、店舗の逸失利益や顧客対応費用の請求にまで広がります。一方で、受託者に故意または重大な過失があるときは、これらの制限が適用されない形にしておくのが、無効とされない書き方です。契約の相手が事業者どうしの場合、消費者契約法は適用されませんが、民法の信義則や公序良俗の規定が働く余地は残ります。
代引金・着払い金の授受と、釣銭の預かり・返還
代金引換や着払いの配送では、受託者が顧客から現金を受け取り、店舗に引き渡す役割を負います。契約書では、受託者は受け取った金銭を、委託者に引き渡さなければならない、と明記します。委任事務を処理するに当たって受け取った金銭は委任者に引き渡さなければならないという民法の規定(民法646条1項)が根拠になりますが、実務では入金の期限、方法、遅れたときの扱いを具体的に書かないと、運用が定まりません。
代引金と釣銭の流れ(例)
- 釣銭の預かり委託者が配送の開始前に、釣銭相当額を受託者に預ける。金額と内訳(紙幣・硬貨の種類)を書面や記録で確認する。
- 顧客からの受領受託者が代金を受け取り、釣銭が必要なら預かった釣銭から渡す。レシートや領収書の交付の要否を決める。
- 配送中の保管現金は車内に放置しない、他の用途に使わない、他人に預けない、といった保管の義務を置く。
- 全配送の完了代引金の総額と、未使用の釣銭を集計する。差額が出たときは、その日のうちに報告する。
- 委託者への引渡し代引金は○日(営業日)までに入金または引渡しをする。未使用の釣銭は、全配送の完了後、直ちに返還する。
釣銭は預かりものであり、報酬とは別に管理します。受託者の資金と混ぜないことが、後の精算を簡単にします。
釣銭の預かりは、法律上は金銭を預かる契約です。種類・品質・数量が同じ物をもって返還する消費寄託(民法666条)の性質を持つことがあります。ここで大切なのは、預かった金額が配送の途中で足りなくなったとき、または現金を紛失・盗難に遭ったときの扱いです。契約書には、釣銭の紛失・盗難があったときは直ちに報告する、受託者に故意または過失がある場合は賠償する、強盗などの不可抗力のときは協議する、といった区分を書きます。代引金の誤受領(過不足)、偽札、顧客が受取りを拒否したときの返金の手続、代金引換の手数料の扱いも、あわせて決めておきます。
代引金の入金期限は、短い期限を設ける委託者が多い一方で、受託者にとっては現金を預かる期間が負担になります。『当日または翌朝まで』のように、期限が短すぎると、休日や遠方の配送で守れなくなる可能性があります。期限を守れなかったときに違約金や契約解除につなげるなら、その期限が実際に守れるものか、違約金の額が過大でないかも点検します(違約金の考え方)。
日当制・件数加算・繁忙期の増便・燃料価格の変動
報酬は、1日あたりの定額(日当)に、一定の件数を超えた分の加算を組み合わせる形が多く使われています。日当制では、報酬の単位が何かをまず定義します。『1日1台あたり』なら、『1営業日において1台の車両で完了する配送業務の単位』のように、1台・1日の意味を書きます。加算の基準になる件数は、配送先の顧客の数で数えるのか、配送先の住所の数で数えるのか、同じ顧客に複数の注文を届けたとき、不在で持ち戻った分、キャンセルされた分を件数に含めるかを決めます。書き方の例として『○件を超えた場合、超える1件あたり○円を加算する』と書くなら、数え方を同じ条に書いておきます。
| 項目 | 決める内容 | あいまいだと起きること |
|---|---|---|
| 日当の単位 | 1台・1日の意味。半日の業務や短縮の場合の扱い | 休みを挟む日や半日の業務で報酬が争われる |
| 件数の数え方 | 顧客単位か住所単位か。不在・持戻り・キャンセルの分 | 加算の対象かどうかで毎月の精算が食い違う |
| 繁忙期の増便 | 増便の依頼の期限(例:実施予定日の○日前まで)、記録の残る方法、増便1台あたりの単価、受託者が断れる場合 | 繁忙期に、報酬が決まらないまま稼働を求められる |
| 見直しの協議 | 燃料価格が著しく上がったとき、配送量や配送コースが変わったときに協議し、報酬の改定を含めて定める | 協議の条があっても、いつ・どちらが申し出るかが書かれず、実効性がない |
| 支払 | 締切日、支払期日、振込手数料の負担、遅延損害金 | 支払が遅れたときの請求の根拠がない |
報酬の支払期日は、委託元が事業者で、受託者が個人または小規模な法人のときは、取適法の規律を受けます。特定運送委託の場合の支払期日は、役務の提供を受けた日から起算して60日以内で、できる限り短い期間内に定めなければなりません(同法3条1項)。代金の減額も、受託者の責めに帰すべき理由がないのに行うことは禁止されています(同法5条1項3号)。たとえば、代引金の差額や釣銭の不足を、確認や協議なしに報酬から差し引くような運用は、この点の問題になり得ます(相殺の通知手続は天引き・相殺・前払金で整理しています)。
費用の変動があったときに受託者が代金の協議を求めたのに、委託事業者が協議に応じず、または必要な説明をせずに一方的に代金を決めることは、取適法で禁止されています(同法5条2項4号)。契約書の見直しの条も、この点と食い違わないように書きます。燃料価格の見直しの条は、書き方に工夫が要ります。『ガソリン価格の著しい高騰その他合理的な事情により、見直しが必要と認められるときは、誠実に協議する』と書く例がありますが、これだけでは、どの水準で、誰が、いつ協議を始められるかが決まっていません。指標となる価格(公表されている価格の指標)、基準とする時点、協議を申し入れる期限、協議が整わないときの扱い(従前の報酬を維持する、第三者の意見を聞く、解約の予告期間を置く)を書くと、条が機能します。
立替費用・記録の保存・第三者からの請求・契約の更新
配送の現場では、駐車場の料金のような立替費用が発生します。契約書には、立替費用の範囲(業務に直接必要な合理的な費用)、精算の条件(領収書などの原始証憑の提出)、精算の期限(当日、または翌営業日まで)、精算された費用について委託者が後から異議を言える期間、証憑の保存期間を書きます。違法な駐車などの行為による費用は精算の対象から外すと書く場合は、行政上の責任を誰が負うかとは別に、費用の最終的な負担者を契約で決めておきます。
第三者(顧客、通行人、他の車両の持ち主)からの請求があったときは、受託者と委託者が協議して過失の割合に応じて分担する、という書き方があります。ただし、これだけでは、先に誰が対応するか、対応の費用を誰が立て替えるか、保険の請求を誰が行うかが決まっていません。事故の報告の期限、保険の加入の確認、顧客対応の窓口を一本化することを、事故の条に書いておきます(事故と保険)。
契約期間は1年とし、期間満了の○か月前までに書面で終了の意思表示がなければ、同一条件で自動更新する、とする書き方が一般的です。自動更新の条は、報酬の見直しの協議や、料金表の変更とも関係します。自動更新のたびに前年と同じ報酬のままになってしまうと、燃料や人件費の変動に対応できないため、更新の前に見直しの協議を行う時期を契約書に書いておきます。契約書とその関連書類(運用の覚書、業務指示書、注文書、メールの確認)の優先順位も、本文で決めておきます。『本契約の定めが優先する。ただし個別契約に本契約に優先する旨の明記があるときはその定めに従う』とする方法が、個別条件の変更を可能にしつつ、責任や賠償の条件が知らないうちに変わらないようにします。
ヒヤリングで確かめること 契約書を作る前に
受託者は個人事業主ですか。会社ですか。従業員のドライバーが走りますか。
取適法・フリーランス法の適用、労働者性の検討、事故時の使用者責任が変わります。
置き配を認めますか。認める場合、対象の商品と場所を絞りますか。
置き配後の責任と、記録の保存の条に直結します。
冷蔵・冷凍品の割合はどのくらいですか。保冷の資材と車両の設備は誰が用意しますか。
責任の型と義務の中身が決まります。
代引きや着払いはありますか。釣銭はいくら預けますか。入金の期限は何時までですか。
金銭の管理の条と、遅れたときの扱いが決まります。
繁忙期はありますか。増便は、いつまでに依頼しますか。受託者は断れますか。
増便の条と、報酬の追加の根拠が決まります。
ネットスーパー・お買い物便の配送委託契約で起きがちなこと
最後の点は、ネットスーパーの配送に特有です。置き配の写真や顧客の住所・在宅状況は個人情報にあたり得るため、どの範囲で受託者が保管し、いつ廃棄し、委託者へどう報告するかを条として書いておく必要があります。また、秘密保持、反社会的勢力の排除、不可抗力、合意管轄などの標準的な条項は、店舗と運送事業者の関係に合わせて、置き配の記録や顧客情報の秘密保持のように、業務の内容と結び付けて書きます。
よくあるご質問
ネットスーパーやお買い物便の配送を委託する契約書で、最低限決めておくべきことは何ですか。
担当店舗・曜日・開始時刻と終了の時点、置き配の可否と置き配後の責任、冷蔵・冷凍品について受託者が負う義務の線、代引金と釣銭の預かりと入金の期限、日当と件数加算の数え方の五つです。これらが書かれていないと、日々の運用の中で口頭の指示が増え、契約書が実態に合わなくなります。
置き配をした後に荷物が盗まれた場合、責任は誰にありますか。
契約書に定めがなければ、運送人は引渡しまでの事故について責任を負う(商法575条)ため、置き配が引渡しの完了といえるかが争点になります。契約書では、置き配は顧客が指定した方法に限り、置き配による引渡しの完了後の紛失・盗難は、受託者に故意または重大な過失がある場合を除き、委託者の負担とするなど、分担を書いておきます。
冷蔵品が傷んだときの責任は、運送事業者が負いますか。
原則として、運送人は運送品の損傷について、注意を怠らなかったことを証明しない限り責任を負います(商法575条)。契約書では、保冷資材と設備を誰が用意するか、守るべき手順は何か、手順を守った場合の責任は誰が負うかを具体的に書いて、責任の線を決めます。
代金引換で預かった現金や釣銭は、いつまでに返す必要がありますか。
期限は契約書で決めます。受け取った金銭は委託者に引き渡す必要があります(民法646条1項)。入金の期限は、休日や遠方でも守れる現実的な期限にし、釣銭は全配送の完了後に直ちに返還する、と書くのが一般的です。
店舗が配送を外部に委託する場合、取適法の対象になりますか。
委託元が事業者で、受託者が個人または一定の規模以下の法人のときは、販売した商品を購入者へ運ぶ運送の委託が特定運送委託(同法2条5項)に当たり得ます。委託事業者に当たるかは、資本金や従業員の数の区分で決まります。支払期日は役務の提供を受けた日から60日以内で、代金の減額は一定の場合を除いて禁止されます。
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本ページは一般的な情報提供です。届出・許可・登録の運用は、所管の行政機関によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月22日)。判例は裁判所ウェブサイトの裁判例検索で確認したものに限って掲載しています。参考: e-Gov法令検索 / 物流・自動車局(国土交通省) / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会) / 裁判所ウェブサイト