車両リース・車両貸与の契約

ドライバーに車を貸す車両リースは、法律上は賃貸借です。どの車を、いくらで貸すのかが決まってから結びます。

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車両が決まる前に署名だけ先に済ませたい、という要望には応じられません。目的物は賃貸借の要素だからです。

このページの要点

  • 車両リースは賃貸借(民法601条)。目的物(車両)と賃料は契約の要素。
  • 業務委託契約と車両の契約は別の書類にし、期間を連動させる。
  • 返却されないときは、損害金と回収費用を定め、回収は法的手続による。自力で引き揚げない。
  • 自家用自動車を業として有償で貸すなら、借受人が使用者である場合を除き許可が必要(道路運送法80条1項)。

結論:車両リース契約書は「どの車を、いくらで」が決まってから結ぶ

ドライバーに車を貸す「車両リース」は、法律上は賃貸借です。事務所が作成した車両リース契約書でも、冒頭の条で「民法その他関係法令に基づく賃貸借契約として賃貸する」と性質を書いています。民法601条は、賃貸借を、物の使用収益をさせることと、賃料を払い契約が終了したら返還することの合意で効力を生ずる契約と定めています。つまり、どの車を貸すのか(目的物)と、いくらで貸すのか(賃料)は、契約の要素です。車両リース契約書の作り方の出発点は、この二つを署名の時点で決めておくことにあります。

業務委託契約と車両の契約は、別の書類にする

ドライバーが使う車には、3つの型があります。

ドライバーの車の3つの型
型内容契約書の扱い
持込みドライバーが自分の車(自己所有・自分で借りたリース車)を使う業務委託契約の車両の条で、委託者は車両使用料・リース料を負担せず請求もしない、リース契約の債務・紛争に責任を負わない、と書く例が多い
会社が貸す(リース・貸与)委託者が所有又は管理する車をドライバーに貸す業務委託契約とは別の車両リース契約・車両貸与契約・自動車賃貸借契約で定める
会社がリース会社から借りた車を使わせる委託者がリース会社と連携して車を用意する登録名義を委託者が指定するリース会社とすることがある、と車両の契約に書く

業務委託契約と車両の契約を別の契約書に分けるのは、事務所の資料の共通の形です。元請の標準契約書も、委託者の所有・管理する車両の使用は別の車両貸与契約・自動車賃貸借契約によると定めていました。配送業者の案件では、業務委託契約とは別に軽貨物車両リース契約を作り、期間を業務委託契約と同じにして、更新もそれに準じるとしました。業務委託の中に車両の貸与の条件を混ぜると、委託が終わったときに車の返却や精算がどうなるのかが分からなくなるからです(軽貨物の業務委託契約書)。

記入欄を消したい・空欄にしたいという相談

納品した車両リース契約書について、依頼者から次の3点の依頼と質問を受けたことがあります。

ご相談と回答 車両リース契約書の記入欄

車両を手配する前に契約を結びたいので、車種名・車両番号の記入欄を削除したい。

削除はできない、とお答えしました。動機が「車両が決まっていないまま署名したい」である以上、署名の時点で目的物が決まっておらず、賃貸借の要素について合意がないことになり、契約の成立や内容そのものが争われます。種類だけを決めて後で特定する形(民法401条2項の種類債権の特定)にも至っていません。車種名・車両番号の欄は原文のまま維持しました。

将来値上げする予定なので、月額リース料の欄を空欄にしたい。

可能です、とお答えしました。リース料の欄を、契約締結日と同じように「各契約の署名の時点で金額を記入する空欄」にすればよく、問題はありません。修正版でリース料の欄だけを空欄にしました。

車種名・車両番号がなくても、法令違反にならないか。

法令違反の問題ではなく、契約の成立(要素)の問題としてご説明しました。料金の改定条項の追加など、ご依頼にない対応は加えていません。

この相談から言えるのは、記入欄を消したい・空欄にしたいという相談では、①その欄が契約の要素(目的物の特定・対価)か、②署名の時に記入する運用上の空欄(日付欄と同じ)か、署名の後に事後で決める空欄か、を分けて考える、ということです。リース料の欄を署名時に記入する空欄にするのは②で問題ありませんが、車両の欄を署名の後で埋める運用は、契約の土台を欠いたまま署名させることになります。

事務所の改訂例 車両の特定の欄

車両の特定

出発点車種名・型式・車両番号・車台番号・登録年月を並べた欄。(当初の案)
改訂後車種名・車両番号の2項目に整理しました。

運用で確実に埋められる項目に絞り、目的物の特定に必要な情報は残しました。

締結の方法

出発点書面と電子の両方を併記。(当初の案)
改訂後依頼者の運用に合わせ、電子契約に一本化しました。

署名の手順を一つに決めておくと、どの版に署名したかの争いを避けられます。

リース料を将来変えたいという要望には、契約の期間の作りも関係します。作成した車両リース契約書は、初回1か月・以後1か月単位の自動更新とし、更新ごとに個別の契約が継続されるものとみなす、と書いていました。期間の定めのない契約が当然に成立するわけではない、と明記しておくのは、貸主が支払の遅延や不適切な使用を理由に更新しないことができる、という条と組み合わせて、関係を短い単位で見直せるようにするためです。リース料の額を変えるときも、署名の時に金額を記入する空欄の運用と、更新の単位の短さを組み合わせて、新しい額で結び直す形が考えられます。いずれにしても、署名した後に貸主が一方的に額を変えられる、という形にはしません。

車両リース契約書の主な条項

事務所が作成した車両リース契約書の構成
条項内容
期間初回1か月、以後1か月単位で自動更新。借主からの終了は希望日の一定日数前までに通知。支払遅延が1回でもある・使用状況が著しく不適切・契約違反がある場合、貸主は更新しないことができる。1か月更新でも期間の定めのない契約を当然には成立させず、更新ごとに個別の契約が継続されるものとみなす
リース料月額(税込)。燃料費・保険料・消耗品費は別。初月無料、2か月目以降は配送の売上から事前の同意に基づき控除し、明細を通知(天引き)
保守オイル交換(走行距離又は期間の早い方)、タイヤ・バッテリー・ブレーキパッドの点検と交換は借主の費用。貸主が保有する車の法定車検・自動車税・重量税・自賠責は貸主の負担。借主が貸主以外から供給された車を使うときは、消耗品・点検整備・公租公課の一切を借主が負担。保守を怠って起きた事故・故障の損害は借主が賠償
事故借主の故意・過失(軽過失を含む)による毀損は修理費・レッカー代・代車費用などを借主が負担。任意保険は対人無制限・対物一定額以上、契約時・更新時に証券の写しを提出、補償内容の無断変更は禁止。保険未加入や保険の適用が否定された場合の損害は借主が全額を負う
返却清掃済み・満タン・通常の損耗を除き著しい損傷がない状態で返す。返却時に査定し、通常の使用を超える損傷・劣化・臭気・改造は修理費などを請求(代替費用は車両の時価相当額が上限)。異議は返却後の短い期間内に文書で
禁止事項無断の転貸・譲渡・質入れ・改造。配送業務以外の使用(私用・観光・家族の送迎・通勤・レジャー・第三者への貸与)。所定の任意保険を欠く運行
解除2か月以上の支払遅滞、故意・重過失による重大な損傷、重要な条項の違反で是正しない場合など
秘密保持運行履歴・ドライブレコーダーの映像・GPSのデータを秘密情報に含め、借主は貸主の明示の書面の指示がない限り使用・保存・開示・複製しない

保守の条で、費用の負担を車両の供給元で二つに分けているのは、ドライバーが会社の車と自分で手配した車を使い分けることがあるからです。会社が保有する車なら、車検や自動車税のように所有者として負う費用は会社が持ち、日々の消耗品と点検は使う人が持つ。会社以外から来た車なら、すべて使う人の側で持つ。この線を引いておかないと、タイヤやバッテリーの交換のたびに負担をめぐるやり取りが生じます。条文では、会社以外から供給された車の費用を「借主又は借主が代表を務める法人」が負担すると書いていました。個人のドライバーが自分の会社を作って車を持つ場合でも、負担の主体が抜け落ちないようにする書き方です。事故の条で、保険未加入や保険の適用が否定された場合の損害は借主が全額を負う、と書いているのは、補償内容の無断変更の禁止や証券の写しの提出と組み合わせて、保険の維持を借主の責任として明確にするためです。返却時の査定で代替費用を「車両の時価相当額」を上限としたのは、古い車の損傷を新車の価格で請求するような過大な請求を避ける趣旨です。

目的外使用の例として「家族の送迎」を挙げているのは、事業用に貸した車が私的な移動に使われると、事故の際の保険の扱いや責任の所在がややこしくなるからです。有償で人を乗せる送迎となれば別の法律の問題にもなります(送迎と白ナンバー)。

返してくれないときの書き方:自力で引き揚げない

車両リースで一番困るのは、契約が終わっても車を返してくれない場面です。作成した車両リース契約書の当初の案では、返還遅延の損害金が空欄で、返還しない場合は「GPS等により位置を特定し…強制的に回収を行うことができる」という書き方でした。依頼者との協議を踏まえた改訂で、次のように改めました。

  1. 返却遅延の損害金を1日あたりの定額とし、契約終了日から一定日数を超えた後は1日あたりの額を引き上げ、実損害は別に請求できるとする。
  2. 終了後・解除後の返還拒否・遅延は1日あたりの定額とし、一定日数を超えたら実損の全額と回収の諸経費(レッカー・調査・輸送・法的手続の費用など)も請求できるとする。
  3. 返還に応じない場合は、GPSなどで所在を特定したうえで、法的手続(仮処分、返還請求訴訟、強制執行など)を通じて返還を請求し、実費を請求する。

法的手続を通じて回収する形にしたのは、契約書に「強制的に回収できる」と書いても、相手の承諾なく自力で引き揚げること(自力救済)は原則として許されないためです。GPSのデータは所在の確認に使い、回収そのものは裁判所の手続による、という役割分担にしました。個人間の中古車の分割払いの売買でも、買主が返還を遅らせたときの引揚げは「社会通念上相当な方法により」と限定しています(中古車の売買)。

倒産を解除の事由にするときの注意

車両リース契約の解除の事由に、借主の破産・民事再生などの申立てを入れる例は多くあります。この点については、フルペイアウト方式のファイナンス・リース契約で、ユーザーについて民事再生手続開始の申立てがあったことを解除事由とする特約は、民事再生手続の趣旨・目的に反し無効とされた最高裁判所の判決があります(最高裁平成20年12月16日第三小法廷判決、民集62巻10号2561頁)。この判決は、フルペイアウト方式のファイナンス・リース契約の、民事再生手続開始の申立てを解除事由とする部分についての判断です。「倒産を理由とする解除の特約は一般に無効」とまで言えるものではありませんが、解除の事由を並べるときは、申立ての事実だけで解除できる書き方に頼りすぎず、支払の遅滞や重大な違反など別の事由もあわせて置いておくのが実務的です。

有償で車を貸すときの許可(道路運送法80条)

自家用自動車(事業用自動車以外の自動車)は、国土交通大臣の許可を受けなければ、業として有償で貸し渡してはなりません。ただし、借受人がその自家用自動車の使用者である場合は除かれます(道路運送法80条1項)。いわゆるレンタカーの許可と、車検証上の使用者を借り手にするリースとの分かれ目が、このただし書です。事務所の資料にあるリース・賃貸借の書面には、車検証上の使用者を誰にするかを定めていないものもあり、「業として・有償で・使用者の名義が貸主のまま」貸すなら、許可の要否を確認する必要があります。事業用自動車(黒ナンバー・緑ナンバー)を運送事業者がドライバーに使わせる場合の扱いは、貨物自動車運送事業法の届出・名義の問題とあわせて確かめます(開業と届出)。

消費者向けの自動車の貸与のうち、借受人が道路運送法80条1項ただし書の使用者として使う場合(いわゆるカーリース)は、訪問販売・電話勧誘販売のクーリング・オフの適用除外です(特定商取引法26条4項1号、同法施行令14条)。消費者庁の特定商取引法の解釈通達は、その趣旨を、自動車リースは契約の締結までに相当の期間を要するのが一般的だから、と説明し、一時的な利用者が交渉に時間をかけて安定的な購入意思を形成するとは考えにくいレンタカーは含まれない、としています。同じ「車を貸す」でも、消費者保護の規律が分かれる根拠です。

条文の例:返還と回収

条文例車両リース契約 第◯条(返還及び回収)

  1. 乙は、本契約が終了したときは、直ちに、本車両を清掃し、燃料を満たし、通常の損耗を除き著しい損傷のない状態で、甲の指定する場所に返還します。
  2. 乙が本車両の返還を遅延したときは、乙は、契約終了日の翌日から返還の日まで、1日あたり金◯円の損害金を支払います。返還の遅延が◯日を超えたときは、その翌日以降の損害金は1日あたり金◯円とします。これらは、甲に生じた実際の損害の賠償の請求を妨げません。
  3. 乙が返還に応じないときは、甲は、GPSその他の方法により本車両の所在を特定したうえで、仮処分、返還請求訴訟、強制執行その他の法的手続により返還を求めることができ、乙は、回収に要したレッカー、調査、輸送その他の費用を負担します。

事務所が作成した車両リース契約書の考え方を、金額を伏せて整理したものです。

2項の後段は、損害金を賠償額の予定と推定されないようにするための一文です(民法420条3項)。3項でGPSの用途を「所在の特定」にとどめているのは、秘密保持の条で借主がドライブレコーダーの映像やGPSのデータを貸主の書面の指示なく使用・保存・開示しないとしていることと対になっています。位置情報は、返却されないときの所在の確認に使う情報であり、日常の運行の監視に使う情報として扱わない、という整理です。

返却時の査定への異議を、返却後の短い期間内に文書で申し出るとしているのも、紛争を早く閉じるための工夫です。返却から時間がたつと、損傷が返却前からあったのか、返却後の保管中に生じたのかが分からなくなります。査定の結果をその場で借主に示し、異議の期限を決めておけば、どちらの言い分が正しいかを確かめられるうちに話を進められます。キッチンカーの賃貸借で、返還時に立会いで状態を確認し、書面・写真で記録するとしたのも同じ考え方です(キッチンカーの賃貸借)。

業務委託が終わったときのリースと、受託側から見た注意

配送業者の案件では、車両リース契約の期間を業務委託契約と同じにし、更新もそれに準じるとしました。業務委託が終われば車両も返す、という連動です。一方で、ドライバーが元請以外のリース会社から自分で車を借りている場合、業務委託契約に「委託者はリース契約に関する一切の債務及び紛争について責任を負わない」と書かれていることが多く、業務委託が終わってもリース料の支払は残ることになります(開業時の車の選び方)。委託者がリース会社と連携して車を用意し、登録名義をリース会社とする形もあります。この場合は、委託者・ドライバー・リース会社の三者の関係で、誰が誰にリース料を払い、業務委託が終わったら誰が車を引き取るのかを、車両の契約に書いておく必要があります。

拠点間の配送委託では、受託した運送会社が自社の車で業務を行うのが原則としつつ、委託者の指示や業務の都合で委託者所有のバンなどを使うことがある、と定めた例もありました。委託者の車を使う場面があるなら、その車の保険の名義や、事故のときの負担を、業務委託契約か別の貸与の取決めで決めておかないと、事故の日に誰の保険で何を払うのかが分からなくなります。

ヒヤリングで確かめること 車両リース契約書を作る前に確かめること

  1. 貸す車は、会社の所有ですか、リース会社から借りた車ですか。車検証の所有者・使用者は誰ですか。

    使用者の名義によって、道路運送法80条の許可の要否の検討が変わります。

  2. 車種名・車両番号は、署名の時点で決まっていますか。

    決まっていなければ、契約は車両が決まってから結びます。

  3. 任意保険は誰が入り、対物の額と運転者の範囲はどうなっていますか。

    業務委託契約で求める保険と食い違わないようにします。

  4. リース料は報酬から差し引きますか。差し引けないときはどう払ってもらいますか。

    明細の通知と別途の支払方法を決めます(天引き)。

  5. 返却の場所・状態と、返却時の査定の方法は決まっていますか。

    通常の損耗との区別と、査定の上限を決めます。

よくあるご質問

車がまだ決まっていませんが、リース契約だけ先に結べますか?

目的物(車両)は賃貸借の要素で、署名の時点で特定されていないと契約の成立そのものが争われます。車両が決まってから、車種名・車両番号などを記入して結ぶのが原則です。

リース料を将来変えたいので、空欄にしてもよいですか?

署名の時点で金額を記入する空欄にするのであれば可能です。契約締結日の欄と同じ扱いです。署名した後で金額を決める運用にすると、対価の合意を欠くことになるため避けます。

返さないドライバーの車を、GPSで探して持ってきてもよいですか?

所在の確認に使うことはできますが、相手の承諾なく自力で引き揚げることは原則として許されません。回収は仮処分・返還請求訴訟・強制執行などの法的手続によると定め、返還の遅延の損害金と回収費用を請求できるようにしておきます。

ドライバーに車を貸してお金をもらうのに、レンタカーの許可は要りますか?

自家用自動車を業として有償で貸し渡すには原則として許可が必要で、借受人がその車の使用者である場合は不要です(道路運送法80条1項)。事業用自動車を運送事業者がドライバーに使わせる場合は、届出・名義の扱いとあわせて確かめます。

業務委託とリースを、1本の契約にまとめてもよいですか?

事務所の作成例は、いずれも別の契約書にしています。業務委託の終了と車両の返却・精算の関係を明確にするためです。期間を業務委託契約と連動させ、更新もそれに準じる書き方はあります。

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