このページの要点
- 管理簿の作成義務は元請だけにあり、傭車先は実運送の情報を元請に通知する義務を負う。
- 傭車先に出す書面は、運賃と積込み・取卸しなどの料金を別建てし、契約当事者の住所まで書く。
- 適正原価は施行前だが、費用の概算額を把握して荷主に交渉を申し出る努力義務はすでに始まっている。
- 傭車先への支払期日は、役務の提供を受けた日から60日以内。上流の入金待ちを条件にする書き方は合わない。
結論:管理簿は元請が作り、傭車先は情報を出す。運賃は内訳を書面に出しておく
「傭車(ようしゃ)」とは、運送会社が自社の車両と運転者だけでは運びきれないときに、別の運送会社に運送を頼むことを指す実務の言い方です。法律の言葉では「他の貨物自動車運送事業者の行う運送を利用する」ことにあたります。一般貨物自動車運送事業者(トラック運送会社)が、荷主から引き受けた運送を別の一般貨物の運送会社に回すとき、契約書で押さえることは大きく二つです。
一つ目は、荷主から引き受けた運送を回した「元請」の側が実運送体制管理簿(実際に運んだ事業者と、荷主から何段目の委託かを記録する帳簿)を作り、傭車先は実運送の情報を元請に通知することです。二つ目は、運賃を書面で決めるときに、運送そのものの対価と、積込み・取卸しなど運送以外の作業の対価を分けて書き、近く導入される「適正原価」の考え方に備えて、運賃の内訳を説明できる形にしておくことです。管理簿と書面交付の義務は2025年4月1日から、委託段階を2次までに制限する努力義務と、違法な白トラへの委託に対する荷主等への罰則は2026年4月1日から始まっています。適正原価を下回る運賃・料金の制限は、2025年6月11日の公布から3年以内に政令で定める日に施行される予定で、まだ始まっていません。
本ページは、再委託の全体像と改正の流れを扱う運送の再委託と改正貨物自動車運送事業法とは角度を変えて、傭車の現場で管理簿を実際にどう回すか、傭車契約書と運賃の書面にどう落とすかに絞ります。荷主との運送契約は荷主と運送会社の運送契約書、取適法とフリーランス法がどう重なるかは運送の業務委託とフリーランス法・取適法で扱っています。なお、傭車先が軽貨物の事業者や個人のドライバーである場合は軽貨物の業務委託契約書の論点が中心になり、本ページは一般貨物の事業者どうしの取引を前提にします。
一般貨物どうしの傭車で、誰が何をするのか
まず言葉をそろえます。「真荷主」とは、自らの事業のために運送事業者へ運送を頼む荷主で、運送事業者や利用運送事業者ではない者のことです。個人事業主でも自らの事業に関して運送を頼むなら真荷主にあたり、一般の消費者は含まれません。「元請事業者」は、真荷主から運送を引き受けた運送事業者です。元請を「0次」と数え、その委託先を「1次」、1次の委託先を「2次」と数えるのが、管理簿でいう「請負階層」です。数え方は、真荷主と元請が結んだ運送契約の後に、運送契約が結ばれるたびに1つずつ増える、というものです。
| 立場 | 管理簿との関係 | 傭車の書面との関係 |
|---|---|---|
| 元請(0次) | 真荷主から1.5トン以上の運送を引き受け、一部でも他社の運送を利用したら、運送ごとに管理簿を作り、完了日から1年間営業所に置く | 傭車先に、運送の役務の内容と対価などを書いた書面を渡す(24条2項)。荷主との間では、相互に書面を交付する(12条1項) |
| 傭車先(1次) | 作成義務はない。元請から受けた通知の内容を守り、自社が実運送をしたときは、自社の名称・貨物の内容と区間・請負階層を元請に通知する。さらに別の会社に回すなら、通知を下へ伝える | 元請から書面を受け取る。さらに他社へ回すなら、自社が委託元として、その会社へ書面を渡す側になる |
| 再傭車先(2次) | 実運送をしたときは、元請に自社の情報を通知する | 傭車先から書面を受け取る |
傭車先が通知を受けていない場合のように、通知すべき事項を知ることができないときは、その事業者に通知義務はかかりません(24条の5第4項ただし書)。通知を怠った上流の事業者が、行政処分の対象になり得ます。
傭車1件で、管理簿ができるまで
- 荷主から運送の依頼を受ける元請は、依頼があった時点の貨物の重量で、管理簿の対象(1.5トン以上)かどうかを判断します。実際の積載量や混載は関係しません。
- 傭車先へ依頼し、書面と通知を出す運送の役務の内容と対価などを書いた書面を渡し、元請の連絡先、真荷主の名称、傭車先の請負階層を通知して、管理簿の対象であることを伝えます。
- 傭車先が運ぶ、または別の会社に回す傭車先が自ら運ぶなら1次が実運送事業者です。回すなら、その会社に傭車先の連絡先・真荷主の名称・その会社の請負階層を通知します。
- 実運送事業者が元請へ通知する自社の名称、運んだ貨物の内容と区間、自社の請負階層を元請に通知します。
- 元請が管理簿に記録し、保存する通知の内容を記録し、運送の完了日から1年間、営業所に置きます。電磁的記録でも構いません。
全部を自社の車両と自社の運転者で運んだ運送には、作成義務がかかりません。1台でも他の運送事業者に回した運送が1.5トン以上なら対象です。自社の運転者のように見えても、別の会社や個人と運送の委託契約を結んで運ばせているなら、階層が1つ増えます。
管理簿は1.5トン未満でも要りますか。毎回作るのですか
管理簿は、法律の条文より運用のほうで迷う場面が多い義務です。ここでは、傭車の現場でよく出る疑問を、国土交通省のQ&Aの考え方に沿って整理します。
よくある疑問と考え方 管理簿の運用
1.5トン未満の運送を何度も重ねています。合計すると1.5トンを超えますが、管理簿は必要ですか。
運送依頼ごとの重量で判断します。真荷主と基本契約を結んでいて、その基本契約に基づく運送依頼が何回かに分かれ、1回ごとは1.5トン未満なら、対象になりません。逆に、1回の依頼が1.5トン以上で、届け先が複数に分かれていても、一つの運送契約として引き受けたなら対象です。届け先ごとに別々の運送契約になっているなら、契約ごとの重量で判断します。
管理簿に決まった様式はありますか。配車表で代用できますか。
決まった様式はなく、必要な事項が載っていれば既存の配車表も使えます。作成の期限の定めはありませんが、運送の完了後、遅滞なく作ることが望ましいとされています。国への定期提出は不要で、監査などで求められたときに提出します。
毎回の運送ごとに作るのが原則ですが、「真荷主から運送を引き受ける時点で、元請から実運送事業者に至るまでの一連の委託関係が明らかになっている場合」は、運送ごとの作成は要りません。取引の構造が固定されている場合で、最初の運送を記録すれば、貨物の内容や区間が違っても、委託関係と実運送事業者が同じ間は改めて記録する必要はありません。委託関係か実運送事業者が1社でも違う運送をしたとき、最初の記録から1年が過ぎたときは、そこから初めて行う運送を記録します。傭車先を数社に絞っていても、引き受ける時点でどの会社が運ぶか決まっていないなら、運送ごとの記録が必要です。
管理簿の記載事項は、実運送事業者の商号または名称、実運送事業者が実運送を行う貨物の内容と区間、実運送事業者の請負階層の三つです。完了日(保存期限の起算日)の欄を足しておくと、後から引きやすくなります。管理簿は荷主の閲覧・謄写の請求で見られる前提で作り、荷主に関係のない傭車先の取引条件は書き込みません。
傭車契約書に入れる条項:通知への協力、次数の制限、許可の確認
管理簿の作成そのものは元請の社内の運用ですが、傭車先から情報が出てこなければ作れません。そこで、傭車の基本契約に、通知の方法と期限、傭車先がさらに別の会社に回すときの扱い、通知と秘密保持との関係を書いておきます。運送の再委託の条に、傭車先が元請の承諾なく他の会社へ運送を回してはならないという一文しかないと、承諾があった場合に誰がどの順で通知するのかが決まらないまま、運送が動いてしまいます。
条文例傭車基本契約 実運送体制管理簿に関する通知(例)
- 甲は、乙に委託する運送が、甲が真荷主から引き受けた貨物の運送であって実運送体制管理簿の作成の対象となるときは、運送の申込書面又は電磁的方法により、その旨、甲の連絡先、真荷主の商号又は名称及び乙の請負階層を乙に通知する。
- 乙は、前項の通知を受けた運送について実運送を行ったときは、運送の完了後○営業日以内に、乙の商号又は名称、運送した貨物の内容及び区間並びに乙の請負階層を甲に通知する。
- 乙が、甲の承諾を得て、前項の運送を第三者に委託するときは、乙は、当該第三者に対し、乙の連絡先、真荷主の商号又は名称及び当該第三者の請負階層を通知し、当該第三者が実運送を行ったときに甲へ通知することができるよう、必要な措置を講ずる。
- 前各項の通知は、第○条(秘密保持)に違反しない。乙は、通知された事項が、法令に基づく真荷主の閲覧又は謄写の請求に応じて、甲から真荷主に示されることがあることを了承する。
- 乙は、第1項の通知を受けていないために通知すべき事項を知ることができないときは、第2項及び第3項の通知の義務を負わない。ただし、乙は、通知を受けていないことに気づいたときは、直ちに甲に確認を求める。
新しく書き起こした条文の例です。実際の運用(通知の手段、期限、荷主名の扱い)に合わせて調整が必要です。第4項は、通知が秘密保持の条に触れるかを巡る疑義を、先に解いておく役割です。
第3項の再委託は、荷主との契約と揃えます。荷主との運送契約に再委託の禁止や次数の制限が付いているなら、その制限を傭車先にも及ぼす条項が要ります。また、法律は元請に、荷主から引き受けた運送の委託段階を、元請を0次として2次までに制限する措置を講ずる努力義務を課しています。罰則や行政処分はありませんが、契約書に次数の上限を書くことは、措置を講じた記録にもなります。
条文例傭車基本契約 再委託、次数、許可の確認(例)
- 乙は、甲の書面又は電磁的方法による事前の承諾を得た場合を除き、本契約に基づく運送の全部又は一部を第三者に委託してはならない。乙が直接雇用する運転者に運送を行わせることは、委託に当たらない。
- 前項の承諾を得て乙が第三者に委託する場合、当該第三者がさらに他の者に運送を委託することはできない。やむを得ない事情があるときは、乙は、あらかじめ理由を示して甲の承諾を得る。
- 乙は、委託先が貨物自動車運送事業法に基づく一般貨物自動車運送事業の許可を受けていることを確認し、許可証の写し及び許可の有効期間を甲に示す。許可の失効、取消し又は事業の停止の命令があったときは、乙は直ちに甲に通知し、当該委託先への運送の委託を停止する。
- 甲が真荷主との契約により委託を制限されているときは、乙も当該制限に従う。甲は、乙に対し、当該制限の内容のうち乙が守るべき事項を、運送の申込書面に記載する。
第3項は、違法な白トラ(許可や届出のない者)への運送の委託が、荷主等も処罰の対象になることに対応する確認の手順です。
許可の確認が要る理由は、2026年4月1日から、許可や届出のない者(いわゆる違法な白トラ)に運送を委託した荷主等も、新たに処罰の対象になったからです。契約の前に許可証の写しと有効期間を取り、失効の連絡を受ける手順を決め、再傭車先の確認も傭車先に示させます。
管理簿の通知で傭車先は真荷主の名称を知るため、直接取引の禁止の条項との整合も見ておきます。禁止を広く定め、違反に一律の高額な違約金を置くと、通知への協力そのものが敬遠されます。損害賠償額の予定は民法420条1項が認めますが、過大な定めは公序良俗(民法90条)に反するおそれがあります。詳しくは荷主との直接取引禁止・競業避止で扱っています。
実務で多い委託契約の条項の型と、傭車でつまずく点
運送の委託契約には、よく使われる書き方の型があります。軽貨物の配送委託で多い型を含め、傭車の基本契約に持ち込んだときに引っかかる点を並べます。型が誤りというより、傭車の義務や書面の要件に合わせて足りない部分を補う、という見方です。
| 型 | よくある書き方 | 傭車で引っかかる点 |
|---|---|---|
| 再委託は事前承諾、責任は連鎖 | 事前の書面の承諾がなければ再委託できず、承諾後も再委託先の行為は自己の行為と同じ責任を負い、同等の義務を課す | 責任の連鎖だけで、何段目の誰が運んだかを元請に知らせる手順がない。通知と次数の上限を足す |
| 所属ドライバーは再委託に当たらない | 自社が雇用または委託契約を結んだ所属ドライバーが運ぶのは可。契約関係のない者に運ばせたら再委託とみなす | 委託契約で運ぶ個人は、管理簿では階層が1つ増える。契約上の定義と管理簿の数え方を揃える |
| 報酬に一切の費用を含む | 車両費・燃料費・人件費・保険料などを報酬に含め、別途請求しない | 積込み・取卸しの別建てを求める書面の要件と合わない |
| 発注の数量は保証しない | 日数や数量の最低保証はなく、引渡し前なら発注を撤回でき、減っても補償しない | 待機した車両と運転者の固定費が回収できない。直前の取消しの費用を決める |
| 解約は発注側だけ即時 | 受注側は長い予告期間、発注側は通知のみで即時、補償なし | 運賃見直しの協議を申し出にくくなる。予告期間をそろえる |
| 稼働できないときの代替手配費用 | 委託先が代わりを手配し、費用を1台あたり定額で請求する | 実費か違約金かが曖昧。実費の範囲に絞る |
運賃の書面:積込み・取卸しを別建てし、「概算額」を根拠に決める
傭車先に渡す書面(24条2項)には、法定の事項があります。国土交通省のQ&Aは、次の六つを挙げています。①運送の役務の内容と対価、②運送契約に運送以外の役務(荷役作業や附帯業務)が含まれる場合は、その内容と対価、③有料道路利用料や燃料サーチャージなど、その他特別に生じる費用の料金、④当事者の氏名または名称と住所、⑤運賃・料金の支払方法、⑥書面の交付年月日、です。
傭車で見落とされやすいのは、②の別建てです。積込みや取卸しなどの荷役作業は、原則として「運送の役務以外の役務」にあたるため、運賃とは別に対価を設定します。個建て(荷物の個数に応じた)運賃でも、積込み・取卸しの料金は別建てです。時間制運賃では、その時間内に行う積込み・取卸しの対価を運賃に含めて構いませんが、その場合でも、積込み・取卸しが発生することは書面に書きます。「運賃に一切の費用を含む」とだけ書いた契約書の様式は、この書面の要件を満たさない可能性があります。
| 項目 | 書き方の例 | 気をつける点 |
|---|---|---|
| 運送の対価 | 区間・車種・台数に応じた運賃 | 距離制、時間制、個建てのどれかを書く |
| 積込み・取卸し | 積込料、取卸料。作業の有無と予定時間 | 個建てでも別建て。時間制で含めるなら、作業が発生する旨を書く |
| 有料道路利用料 | 実費を元請が負担する、と書く | 精算方法が書いてあれば金額は書かなくてもよい。通行区間を変えたときの扱いは決めておく |
| 燃料サーチャージ | 算定の方法、改定の時期 | 改定の基準がないと、燃料価格の変動時に協議が長引く |
書面は契約書の形でなくても構いません。基本契約書、運送依頼書、送り状、単価表などの複数の書面で法定事項をそろえ、書面どうしの関連が分かればよいとされています。
書面の形式にも決まりがあります。電話だけで運送を依頼する運用は認められず、電話で依頼した場合も、電話連絡の後に直ちに書面を交付します。スポット輸送も、災害などのやむを得ない場合を除いて書面が必要です。基本契約書に法定事項がすべて入っていて、運送ごとに運送の役務と附帯業務の内容が変わらないなら、依頼ごとの書面は要りません。附帯業務の有無が運送のたびに決まるなら、依頼ごとに書面が要ります。未定の事項は、決まった事項を先に交付し、残りを遅くとも運送の前までに、関連が分かる別の書面で交付できます。電子メールなどの電磁的方法には相手方の承諾が必要です。
荷主が提示した運賃で傭車の費用をまかなえるかは、運賃を書面にする前に確かめます。法律が求める措置は、傭車の費用の概算額を把握したうえで、それを勘案して利用の申込みをすること、荷主の提示運賃が概算額を下回る場合は、荷主に運賃・料金の交渉を申し出ることです(24条1項)。努力義務で罰則や行政処分はありませんが、運賃を不当に据え置くなどの疑いがあれば、トラック・物流Gメンによる是正指導の対象になります。
比べるのは「荷主の提示運賃」と「傭車の費用の概算額」です。荷主の提示額から傭車先の概算額(運賃、積込み・取卸し、有料道路、サーチャージの合計)を引いた残りで、元請の配車や管理の費用をまかなえるかも見ます。国土交通省の運送利用管理規程のひな形には、利用運送の手数料を運賃とは別に収受できるよう荷主と交渉する、という項目があります。
傭車先に出す書面が取適法の書面と同じ取引にかかる場合は、両方の法定事項が入っていれば1通で兼ねられます。トラック法にだけ求められる記載事項は契約当事者の住所、取適法にだけ求められる記載事項は支払期日です。保存期間は、トラック法の書面が1年、取適法の取引記録が2年で、両方がかかる取引では2年保存すれば足ります。取適法が傭車の取引にかかるかどうかは、双方の資本金などの区分で決まります。運送の区分と特定運送委託の扱いは取適法の解説に譲ります。
適正原価が始まると、傭車の運賃は何が変わりますか
適正原価は、国土交通大臣が、トラック運送の運賃・料金について、適正な事業運営のために通常必要と認められる費用を積み上げて定め、告示する額です。概要資料は、積み上げる費用として、燃料費、人件費、減価償却費、輸送の安全確保の経費、委託手数料、事業を続けるための投資の原資、公租公課などを挙げています。現在の「標準的運賃」は、適正原価の制度が始まると廃止される予定です。
義務は二方向にかかります。トラック運送事業者は、自分が引き受ける運送の運賃・料金が適正原価を下回ることとならないようにしなければなりません(受注者の義務)。トラック運送事業者と利用運送事業者は、他のトラック運送事業者の運送を利用するときも、利用する運送の運賃・料金が適正原価を下回ることとならないようにしなければなりません(発注者の義務)。傭車でいえば、傭車先は自分の受ける運賃で、元請は傭車先に払う運賃で、それぞれ義務を負うことになります。適正原価を支払わない荷主は、違反の原因となる行為として是正指導の対象になります。判定の方法は、一定期間の総走行距離や総稼働時間などを使って適正原価を算出する式を示す案が、国土交通省の資料で検討されています。
施行の日は公布から3年以内に政令で定めることになっており、告示される額や判定の基準は、このページを書いている時点では確認できていません。いま契約書に「適正原価を下回らない」と書いても、基準となる額が決まっていないので、中身のない約束になります。現時点で備えられるのは、運賃の内訳を書面で分けること、費用の見直しを協議する条を置くこと、協議の申出を理由に配車を減らすなどの不利益な扱いをしないと書くこと、台数や日数を保証しない発注では直前の取消しの費用を決めることです。待機させた車両と運転者の固定費は、原価の中心にある費用だからです。
条文例傭車基本契約 運賃・料金の見直し(例)
- 甲及び乙は、燃料費、人件費その他運送に要する費用が著しく変動したとき、関係法令が改正されたとき、又は国土交通大臣が運賃及び料金の適正原価を告示したときは、第○条の運賃及び料金の見直しについて協議する。
- 前項の協議は、いずれか一方の申出により開始する。申出をする者は、変動の内容を示す資料を相手方に提出し、相手方は、申出から○日以内に協議の場を設ける。
- 甲は、乙が前項の申出をしたことを理由として、乙に対する配車の減少その他の不利益な取扱いをしない。
- 協議が整うまでの間は、従前の運賃及び料金を適用する。協議が整ったときは、適用の開始日を定めて、第○条の書面を改めて交付する。
第1項の「適正原価の告示」は、告示がされたときに協議の入口とする趣旨です。告示の前に、適正原価に連動して運賃が変わる仕組みを置くものではありません。
条文例傭車基本契約 発注の取消しと代替手配(例)
- 甲は、運送日の○日前までは、費用を負担することなく、運送の申込みを取り消すことができる。
- 甲が前項の期限の後に取り消したときは、乙が当該運送のために既に確保した車両及び運転者の待機に要した費用のうち、乙が資料を示して請求した実額を、甲が乙に支払う。
- 乙は、運転者の疾病、車両の故障その他の事情により、申し込まれた運送を行えないときは、直ちに甲に通知する。甲が代わりの運送事業者を手配したときは、乙は、甲が当該手配に要した費用のうち、通常要する額を超えない実額を負担する。
- 甲は、前項の費用の内訳を乙に示す。乙は、内訳に疑義があるときは、示された日から○日以内に協議を求めることができる。
新しく書き起こした条文の例です。第2項は待機した車両と運転者の固定費の回収、第3項は一律の定額ではなく実費に絞る趣旨です。数量を保証する発注にするかは、取引の実態で決めます。
よくある失敗と直し方
傭車の契約でよく見られる書き方と、その整え方を、次の七つに絞って示します。いずれも、管理簿と運賃の書面の要件、または支払の枠組みに合わせるための直しです。
書き方の例(一般的な例) 傭車契約の条項
傭車先がさらに回すとき
自由に再委託できる構成だと、荷主から何段目か、誰が実運送かを元請が把握できず、管理簿が作れなくなります。承諾と次数の上限、通知を一組にします。
運賃に何が含まれるか
一括の書き方だと、積込み・取卸しの別建てを求める書面の要件に合いません。適正原価の議論でも、どの費用が運賃に入っているかが分からなくなります。
上流の入金やクレームを支払の条件にする
取適法がかかる取引では、支払期日は、役務の提供を受けた日から60日以内でできる限り短く定める必要があり、請求書の遅れや報告書の到着日は起算日になりません。上流の入金待ちや、元請の裁量で決まる延期の事由は、この枠と合いません。
請求書の期限と支払日が前後する
請求書の提出期限が支払日と同じ日か、それより後になっていると、請求書の到着が支払期日を左右するように読めます。提出期限を支払日より前に置き、支払期日は役務の提供を受けた日から数えられる形にします。
発注の取消しと代替手配を一方向で決める
待機した車両と運転者の固定費は、原価の中心にある費用です。取消しの側にも、代替手配の側にも、実額と上限を置いて、双方向にそろえます。
運賃と依頼を随時・口頭で決める
運賃は、24条2項の書面で、運送ごとに当事者が認識できる状態にする必要があり、電話だけの依頼は認められません。協議が整うまでは従前の額、という流れも書いておきます。
荷主との直接取引を広く禁止する
管理簿の通知で荷主名を知らせる以上、範囲・期間・損害の算定を絞ります。過大な定めは、公序良俗の観点から争われるおそれがあります。
支払期日の数え方は、締め日の運用で間違えやすい点です。取適法がかかる取引では、支払期日は役務の提供を受けた日から60日以内でできる限り短く定める必要があります。月単位で締める運用では、締切日に提供があったものとして数える扱いが認められる場合がありますが、その扱いが及ぶかどうかは、委託の区分によって変わります。区分に左右されないよう、月末締め翌月末日払いのように、月の最初の日の分から数えても受領後2か月以内に収まる組合せにしておくのが無難です。傭車先から再傭車先への支払にも同じ枠が問題になります。
荷主に対する元請の責任の範囲と、傭車先に求める責任の範囲が食い違うと、その差額は元請が抱えることになります。事故や荷物の破損の分担と保険は配送の事故・荷物の破損と賠償・保険で、報酬からの天引きや相殺は軽貨物の報酬からの天引き・相殺・前払金で、傭車先が車両を出せなかったときの代替手配の費用は代走費・違約金の決め方で扱っています。
ヒヤリングで確認すること
傭車の契約書を整えるときに、運送会社の側から確かめておきたい事項を、確かめる理由とあわせて並べます。条文を決める前にこれが分からないと、書面が実態と食い違ったまま運用が始まります。
ヒヤリングで確かめること 傭車の契約書を整える前に
真荷主から引き受ける運送は、1回の依頼で1.5トン以上になることが多いですか。基本契約の下で、依頼が細かく分かれていますか。
管理簿の対象になる運送の量と、運送ごとに作る必要があるのかを決める出発点です。
傭車先は決まった数社ですか。運送のたびに変わりますか。荷主から引き受ける時点で、実運送をする会社が決まっていますか。
毎回作る型か、初回に作り変化があれば作る型かが変わります。
傭車先がさらに別の会社に回すことはありますか。ある場合、何次までを認めますか。
委託段階を2次までに抑える努力義務と、通知の流れの設計に直結します。
傭車先の運転者は、雇用された人ですか。別の会社や、委託契約を結んだ個人が運ぶこともありますか。
契約書で「所属ドライバー」を再委託に当たらないと定めても、委託契約で運ぶ個人がいれば管理簿の階層は増えます。定義と実態をそろえるために確かめます。
発注は定期便ですか、スポットですか。数量の保証、直前の取消し、減便の扱いはありますか。
待機した車両と運転者の費用を誰がどこまで負担するかを決める前提です。
傭車先から実運送の情報を、いつ、どの方法で受け取れますか。
通知の期限と方法を契約書に書く前提です。通知が運送の後になるなら、遅れを前提にした手順が必要です。
傭車先に払う運賃には、積込み・取卸し、待機、有料道路、サーチャージのどれが含まれていますか。
書面の別建ての要件に合わせて、費目を分ける必要があるかが決まります。
荷主との運送契約では、再委託の制限や運賃の改定の条項はありますか。荷主の提示額と傭車先の見積りの差は、どの程度ですか。
荷主の制限を傭車先に及ぼす条項が要るか、概算額との差を荷主に伝える場面があるかを確かめます。
荷主に賠償したとき、傭車先にどこまで負担を求めますか。傭車先の保険の補償範囲はどこまでですか。
荷主との契約の賠償範囲と傭車先に求める範囲がずれると、その差額は元請に残るためです。
傭車先への支払の締め日と支払日は、いつですか。上流の入金を待ってから払う慣行がありますか。
支払期日が役務の提供を受けた日から60日以内に収まるか(月単位の締切制度の扱いを含め)を確かめます。
傭車先の許可証の写しと有効期間を、契約の前に確認していますか。更新や失効の連絡を受ける手順はありますか。
許可のない者への委託を避ける確認の手順と、将来の許可更新制への備えになります。
よくあるご質問
実運送体制管理簿は、傭車先(協力会社)も作る必要がありますか。
作成義務があるのは、荷主から運送を引き受けた元請事業者です。傭車先に作成義務はありませんが、元請から受けた通知を守り、自社が実運送を行ったときは、自社の名称、運んだ貨物の内容と区間、請負階層を元請に通知する義務があります。さらに別の会社に回すときは、受けた通知の内容を下へ伝えます。
1.5トン未満の運送でも、管理簿を作る必要がありますか。
荷主から運送の依頼があった時点の重量が1.5トン未満なら、対象になりません。実際の積載量や混載は関係しません。基本契約の下で依頼が何回かに分かれ、1回ごとが1.5トン未満なら、合計が1.5トンを超えても対象外です。一つの運送契約で引き受けた貨物の届け先が複数に分かれているときは、一つの契約の重量で判断します。
管理簿の様式はありますか。配車表を使っても構いませんか。
決まった様式はありません。実運送事業者の名称、貨物の内容と区間、請負階層が載っていれば、既存の配車表も使えます。運送の完了日から1年間、営業所に置きます。荷主は元請に閲覧・謄写を請求できるので、自社の荷物だと分かる粒度で記録します。
適正原価はいつから適用されますか。いまの運賃交渉に影響しますか。
適正原価を下回る運賃・料金の制限は、2025年6月11日の公布から3年以内に政令で定める日に施行される予定で、本ページの執筆時点で告示の額や判定基準は確認できていません。ただし、傭車の費用の概算額を把握して申し込み、荷主の提示運賃が概算額を下回るときは交渉を申し出る努力義務は、すでに始まっています。
傭車先に出す書面を、取適法の書面と兼用できますか。
両方の法定事項が入っていれば、1通の書面で兼ねることができます。トラック法にだけ必要な事項は契約当事者の住所、取適法にだけ必要な事項は支払期日です。保存期間は、トラック法の書面が1年、取適法の取引記録が2年で、両方がかかる取引では2年保存すれば足ります。
傭車先が自社の所属ドライバーに運ばせるとき、管理簿の階層は増えますか。
雇用した運転者が運ぶなら、傭車先が自ら運ぶ運送なので階層は増えません。別の会社や、委託契約を結んだ個人に運ばせるなら、委託契約が結ばれるたびに階層が1つ増えます。契約書で「所属ドライバー」を再委託に当たらないと定義していても、管理簿の数え方は別なので、定義と実態をそろえておきます。
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本ページは一般的な情報提供です。届出・許可・登録の運用は、所管の行政機関によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月22日)。判例は裁判所ウェブサイトの裁判例検索で確認したものに限って掲載しています。参考: e-Gov法令検索 / 物流・自動車局(国土交通省) / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会) / 裁判所ウェブサイト