このページの要点
- 記録の義務を負うのは運送事業者。荷主は状況の把握が求められ、特定荷主(年間の取扱貨物9万トン以上)は定期報告の義務がある。
- 荷待ち時間は荷主側の都合で待たされた時間で、指示時刻より早く着いたときは指示時刻から数える。休憩は含めない。
- 積込み・取卸しなどは運賃と別建てが原則で、運送契約の書面(貨物自動車運送事業法12条)に内容と対価を書く。
- 記録の方法・採用の順番・確認と異議の期間を契約に書き、元請・下請・着荷主の間でも無料の時間と単価を揃える。
結論:記録の義務は立場ごとに違い、待機時間料は契約に書いた分だけ請求の根拠になります
「荷主には荷待ち・荷役の記録義務があるのか」という問いに先に答えると、荷主の全員に一律の記録義務があるわけではありません。記録の義務を負うのは、まず運送事業者です。荷主に求められているのは、荷待ち時間などの状況を適切に把握することで、年間の取扱貨物が一定の量以上になる「特定荷主」になると、その状況を国に定期報告する義務が加わります。待機時間料はこれらの記録を請求の根拠にするものですから、だれが、何を、どの方法で記録し、どう確認し合うかを契約書に書いておいた分だけ、争いにならずに請求できます。
この記事は、荷主(自らの事業のために運送を頼む会社)と運送事業者、そして間に入る元請が、荷待ちと荷役の時間をどう記録し、待機時間料をどう契約に書くかを、一般的な例で整理したものです。「物効法」は、物資の流通の効率化に関する法律の略称です。荷主に荷待ち時間などの短縮の努力義務を置き、特定荷主に計画の作成や定期報告を義務づけています。運賃と料金の区分や標準運送約款との関係は荷主と運送会社の運送契約書で扱っているので、ここでは「時間の記録」と「待機時間料の条項の組み立て」に絞ります。
まず、立場ごとの違いを表にします。
| 立場 | 記録・把握について求められること | 根拠 | 契約書で手当てすること |
|---|---|---|---|
| 運送事業者(トラック事業者) | 乗務ごとの業務記録に、荷主の都合で30分以上待機したときの到着・出発の時刻、積込み・取卸しの開始・終了の時刻などを記録し、最低1年間保存する。荷役作業・附帯業務も記録の対象で、2025年4月1日から全車両が対象になった。 | 貨物自動車運送事業輸送安全規則(国土交通省令) | 荷主が記録を確認する方法と、記録を請求に使うことの合意 |
| 荷主(第一種荷主・第二種荷主) | 運転者の荷待ち時間等の状況と、短縮の取組・効果を適切に把握することが、荷主の判断基準に置かれている。把握の方法は定められておらず、受付簿、予約システム、運送事業者からの提供などが想定されている。 | 物効法42条(努力義務)、荷主の判断基準5条2号 | 自らの施設の記録を取ること、運送事業者の記録の提供を受けること |
| 特定荷主 | 前年度の取扱貨物が9万トン以上の荷主は届出を経て指定され、中長期計画の作成・提出、物流統括管理者の選任、定期報告が義務になる。定期報告をしない、または虚偽の報告をすると罰金(50万円以下)の対象になる。 | 物効法45条、76条 | 取引先に時間のデータの提供を求める根拠と、算定方法の統一 |
| 元請(受けた運送を他の事業者に運ばせる運送事業者・利用運送事業者。利用運送事業者は、自ら運ばず他の運送事業者の運送を利用して荷物を運ぶ事業者) | 物効法でいう荷主ではない。運送を他の事業者に利用させるときは、運送の役務の内容と対価(荷役作業・附帯業務等を含む場合はその内容と対価)を記載した書面を委託先に交付する。 | 貨物自動車運送事業法24条2項 | 実際に運ぶ事業者の記録を受け取り、荷主への請求に使う流れ |
荷主の判断基準は、荷主事業所管大臣が、努力義務の判断の基準として定めたものです(物効法43条1項)。努力義務そのものに罰則はなく、必要に応じて指導・助言が行われます(同法44条)。
国は、荷待ち時間等を原則として1回の受渡しごとに1時間以内、やむを得ない事情がある場合を除いて2時間を超えないようにするという目標を、基本方針に置いています。時間を短くする取組は荷主の仕事ですが、短くならなかった時間に対して、運送事業者が負担を強いられないようにするのが、待機時間料の条項の役割です。
荷待ち時間と荷役等時間は、どこからどこまでを数えるのか
数え方の結論は、荷待ち時間は「荷主側の都合で待たされた時間」だけで、到着した時刻ではなく、指定された時刻や受付の時刻から数える場合がある、ということです。物効法は「荷待ち時間」を、運転者が集貨・配達の場所やその周辺で、荷主やその場所の管理者などの都合により貨物の受渡しのために待機した時間と定めています(同法30条4号)。算定の方法は国土交通省の規則に置かれていて、到着の時刻(一定の場合はその時刻)から荷役等を始めた時刻までを数えます(国土交通省関係物資の流通の効率化に関する法律施行規則5条2項)。
| 場面 | どこから数えるか | 考え方 |
|---|---|---|
| 到着の時刻や時間帯の指示がなく、到着後すぐに受付をした | 受付をした時刻から | 到着から受付までの短い時間は、待機として数えない整理になる |
| 指示された時刻より早く着いた | 指示された時刻(時間帯の開始時刻)から | 早く着いて並んだ時間まで荷主の責任にしない |
| 指示された時刻に着いた、または遅れて着いた | 到着した時刻から | 遅れて着いても、遅れにかかわらず生じる待機は数える |
| 遅れて着いたため、荷役の順番が後ろになった | 遅れに起因して増えた分は数えない | 増えた分は荷主等の都合による待機ではない |
| 業務から完全に離れて休憩できる時間 | 含めない | 休憩の時間は荷待ち時間にならない |
天候や交通事情など、荷主等の責任によらず生じた荷待ちも、遅れにかかわらず生じる分を除いて、数えない扱いができるとされています。
荷役等時間も、同じ法律で定義されています(同法30条5号、規則6条)。含まれるのは、荷積み・荷卸しのほか、貨物の品質や数量が契約の内容に合っているかの検査(検品)、荷造り、搬出、搬入、保管、仕分け、陳列、ラベルの貼付け、代金の取立てや立替え、荷主等が行う荷役への立会いなど、貨物自動車の運転に附帯する業務です。時間は、荷役等を始めた時刻から終えた時刻までで、荷役等に従事していない時間は除きます。注意したいのは、すぐに車を動かせる状態での待機や、荷役への立会いが必要な時間は、業務から離れられず休憩にならないため、荷役等時間に入る、という整理が国の解説書に示されていることです。1か所で荷卸しと荷積みの両方を行うときは、別々の荷役等時間として数えることができます。
ここで大事なのは、これらが物効法上の努力義務と報告のための数え方であって、待機時間料が発生する条件をそのまま決めるものではない、という点です。契約書で「荷主の責による待機」とだけ書くと、起算点も、休憩の扱いも、遅れて着いた場合も決まりません。契約の側でも同じ数え方に揃えておくと、特定荷主の取引先が時間のデータを求められたときに、請求の時間と報告の時間が食い違わずに済みます。
待機時間料は運賃と別建てにするのか、書面にどう書くのか
結論から言うと、積込み・取卸しなどの荷役作業や附帯業務は、原則として「運送の役務以外の役務」にあたり、運賃とは別に対価を設定するのが国の整理です。2025年4月1日から、荷主(法律上は「真荷主」。自らの事業に関して運送事業者と契約して運送を委託する、運送事業者以外の者をいいます)と貨物自動車運送事業者は、運送契約を結ぶときに、次の事項を記載した書面を相互に交付する義務があります(貨物自動車運送事業法12条1項)。
- 運送の役務の内容と対価
- 運送契約に荷役作業・附帯業務等が含まれる場合は、その内容と対価
- その他特別に生じる費用に係る料金(有料道路利用料、燃料サーチャージなど)
- 契約の当事者の氏名または名称と住所
- 運賃・料金の支払方法
- 書面を交付した年月日
書面はメールでも構いませんが、電磁的な方法で行うには相手方の承諾が必要です。交付した書面の写しは1年間保存します。貨物自動車運送事業者には、一般貨物自動車運送事業者のほか、貨物軽自動車運送事業者も含まれます。国の運送申込書の書式例には、待機時間料の欄(見込み待機時間と、30分あたりの単価)も設けられています。
運賃の種類で、荷役・待機の書き方が変わる
時間内の積込み・取卸し
時間制運賃その時間内に行われる積込み・取卸しの対価を、運賃に含めてもよい。含める場合も、積込み・取卸しが発生することは書面に明記する
距離制・個建運賃など運賃とは別建てで対価を設定する。個建運賃でも同じ
待機時間料
時間制運賃国の標準的な運賃では、時間制運賃の時間内であれば待機時間料も運賃に含まれる扱い。時間を超えた分をどうするかは契約で決める
距離制・個建運賃など無料の待機時間と、超えた分の単位・単価を書く
書面に書くこと
時間制運賃時間の範囲(何時間分を運賃に含むか)と、含む作業の種類
距離制・個建運賃など料金の種類ごとの単価と、数量の数え方(個数、時間、回数)
荷役作業等の記載の細かさに決まりはなく、当事者が必要な作業を認識できる程度で足りるとされています。
基本契約書だけで足りるかどうかも、よく聞かれる点です。法定事項がすべて基本契約書に書かれ、運送の役務と役務以外の役務の内容が日々変わらないときは、依頼のたびの書面は要りません。ただし、附帯業務の有無が運送ごとに違い、依頼のたびに決まるようなときは、依頼ごとにその有無を書いた書面が必要です。契約の時点で決まっていない事項があるときは、決まった時点で別の書面を、遅くとも運送が行われる前に交付します。複数の書面(基本契約書、覚書、運送依頼書、単価表など)で法定事項をそろえてもよく、その場合は書面どうしの関連づけが必要です。合計金額の記載そのものは法定事項ではありませんが、単価や料率を基本契約書に結びつけ、数量から対価の合計が一つに決まるように書いておく必要があります。
運送事業者に責任のない長時間の待機について、費用の負担も別建ての書面もないままだと、中小受託取引適正化法(取適法)の問題にもなり得ます。国の解説書は、役務提供委託または特定運送委託をした委託事業者が、受託した側の責めに帰すべき理由がないのに長時間待機させて給付の内容を変更させ、その待機に必要な費用を負担しないことは、不当な給付内容の変更(同法5条2項3号)にあたると説明しています。この法律が適用されるかは取引の当事者の規模などの基準で決まりますので、適用の有無は取引ごとに確かめます。貨物自動車運送事業法の書面と取適法の書面は、両方の法定事項が入っていれば1通で兼ねることができ、取適法の側で支払期日が必要になります。保存は、取適法の2年に揃えれば足ります。運送の業務委託と取適法・フリーランス法の関係は運送の業務委託とフリーランス法・取適法で詳しく整理しています。
記録が食い違わない仕組みと、元請・下請・着荷主がいるときの流れ
待機時間料の争いは、料金の高さより、「何分待ったのか」の食い違いから始まりがちです。記録の方法には、現場の受付簿、トラック予約受付システムの記録、デジタルタコグラフ(走行や時刻を自動で記録する機器)の情報などがあります。国の解説書は、休憩時間を正確に除くにはデジタルタコグラフの活用が有効だとしています。契約では、方法を一つに決め打ちにするより、複数の記録がある場合の採用の順番と、食い違ったときの扱いを決めておくほうが現場に合います。
運送事業者の業務記録には、記録した内容を荷主が確認したか、確認が得られなかったかも記録する決まりがあります。荷役作業等の記録については、契約書に実施した荷役作業等がすべて明記されている場合は、荷役作業等に要した時間の合計が1時間以上となったときが記録の対象になると案内されています。契約書の作業の書き方が、記録の手間にも影響するということです。荷主の側で確認の方法(サイン、アプリ上の承認、メールの返信)を決めておけば、その確認が業務記録にもそのまま使えます。
請求までの流れの例(契約書に書いておく順番)
- 依頼の書面荷役作業・附帯業務の有無、無料の待機時間、超えた分の単位と単価を、依頼の書面(または基本契約書の別紙)に書く
- 現場での記録運送事業者は到着・荷役の開始と終了・出発の時刻を、荷主は受付と荷役の時刻を、それぞれ記録する
- その場での確認運転者が記録の内容を荷主側の担当者に示し、確認の有無を残す
- 月次の提示運送事業者が、待機があった運行の記録をまとめて提示する
- 異議の期間荷主は一定の日数内に異議を述べ、述べなければ記録の内容を確認したものとする
- 請求と支払確認した記録に基づいて待機時間料を請求し、運賃とは別の項目で支払う
間に元請が入る取引では、記録と責任の流れがもう一段複雑になります。物効法では、運送の事業を行う元請のトラック事業者や利用運送事業者は荷主から除かれ、運送の委託を行った側が荷主になります。元請から下請に出す場合も、元請は委託先に、荷役作業・附帯業務等を含む運送の役務の内容と対価を記載した書面を交付します(貨物自動車運送事業法24条2項)。再委託と改正法の全体は運送の再委託と改正貨物自動車運送事業法に整理してあります。実際に荷待ちをするのは最後の実運送の事業者ですから、その記録が元請を通じて荷主の請求に届く経路を、契約で作っておく必要があります。
記録と請求が流れる経路の例
- 実運送の事業者到着・荷役・出発の時刻を業務記録に残す。待機が一定の長さを超えたら、元請に連絡する
- 元請実運送の記録を受け取り、委託先への支払と、荷主への請求の両方の根拠にする。委託先との書面で、待機時間料の単価と無料の時間を荷主との契約に合わせておく
- 荷主(発荷主)記録を確認し、待機時間料を支払う。受渡し場所の管理者が別にいるときは、管理者との間で原因と費用を整理する
- 着荷主・受渡し場所の管理者荷待ちが長くなる原因を作っている場合は、荷主との契約や納品のルールで、予約や荷役の準備を整える
国の解説書は、運送事業者と契約関係にない着荷主の責による荷待ち時間や、契約にない附帯作業の対価と作業範囲について、運送契約や発荷主と着荷主との契約で整理することを挙げています。
着荷主は運送事業者と契約関係にないことが多く、荷待ちの原因が着荷主にあっても、運送事業者は着荷主に直接請求できません。そこで運送契約の側に、「受渡し場所の管理者の都合で待機した場合も、委託者が本契約に従って支払う」という条を置き、委託者が着荷主との間の契約で調整する形にします。運送の依頼が元請から下請へ続く取引で、無料の待機時間や単価が段ごとにばらばらだと、下請の運送事業者のところで差額を負担することになります。個人の運送事業者に委託する場合の契約書全般は軽貨物の業務委託契約書を参照してください。
よくある失敗と直し方
荷待ちと荷役に関する条項で、実務でよく見られる書き方と、整え方の例を挙げます。いずれも、特定の取引を前提にしない一般的な例です。
書き方の例(一般的な例) 荷待ち・荷役の条項
附帯作業の包括
附帯業務を包括して定額に含めると、待機が長くなっても対価が動きません。国の整理でも、荷役作業等は原則として運賃と別建てです。
日額で、終了時刻が決まっていない
終了時刻が荷物の量や待機の長さしだいで伸びる形は、待機の負担が運送事業者に集まりやすくなります。上限と、超えたときの対価を書きます。
一方の記録だけで算定
請求する側だけの記録では、受ける側が「そんなに待たせていない」と言えば止まります。記録の種類の順番と、確認の方法が要ります。
端数と単位の書き漏れ
端数の扱いを書かないと、10分の超過が0円なのか1単位なのかで争いになります。切上げか切捨てかのどちらかを、契約書で決めておきます。
関連書類との食い違い
書面交付義務の書面は複数に分けてもよいとされていますが、互いに関連づけられ、優先順位が分かることが前提です。
ヒヤリングで確認すること
待機時間料の条項は、同じ文言でも、現場の流れしだいで過不足が出ます。条項を作る前に、次のことを確かめておきます。
ヒヤリングで確かめること 荷待ち・荷役の条項を作る前に
運賃は、時間制、距離制、個建、日額のどれですか。
時間制運賃は時間内の積込み・取卸しと待機を含められますが、個建運賃では荷役を別建てにする必要があり、書き方が変わります。
積込み・取卸しは運転者が行いますか。荷主側の作業員が行い、運転者は立ち会うだけですか。
立会いも荷役等時間に入るため、記録の対象になり、料金の発生にも関わります。契約に作業の範囲を書く土台です。
到着の時刻や時間帯を、荷主側が指定しますか。指定する人は決まっていますか。
荷待ち時間の起算点は、指示された時刻に左右されます。指示が口頭だと、早着や遅着の判断ができなくなります。
現場の受付は、どう行いますか。受付簿、予約システム、デジタルタコグラフのうち、何が使えますか。
契約に書く記録の方法と採用の順番を、現場で実際に取れる記録に合わせるためです。
受渡しの場所は、荷主が管理する施設ですか。荷主が保管を預けている倉庫(寄託先)や、着荷主の施設ですか。
荷主が短縮すべき時間の対象は、荷主が管理する施設等です。管理者が別なら、原因と費用の整理を別の契約で行う必要があります。
運送は何段階で下りてきますか。元請は運送事業者ですか、利用運送事業者ですか。
書面交付の相手と根拠条文が変わります(12条と24条2項)。待機時間料の単価を段ごとに揃えられるかも確かめられます。
取引先から、荷待ち時間のデータの提供を求められていますか。年間の取扱貨物の重量は、どのくらいですか。
特定荷主の取引先は、定期報告のために時間のデータを求められます。算定方法を契約で揃える理由になります。
直近で、一番長く待たされたのは何分で、原因は何でしたか。
無料の待機時間と単位を、現実の分布に合わせて決められます。原因が特定の曜日や時間帯に偏るなら、条項より予約の運用を直すほうが先です。
条文例と計算例
ここでは、委託者(荷主または元請)と運送事業者の間の契約を想定して、新しく書き起こした条文例を示します。数字は説明のための仮のものです。
条文例第〇条(待機及び荷役等の時間の記録と確認)
- 運送事業者は、運行ごとに、運転者が集貨又は配達を行う場所又はその周辺に到着した時刻、荷役等(荷積み、荷卸し、検品、仕分けその他運転に附帯する業務をいう。以下同じ。)の開始及び終了の時刻並びに当該場所を出発した時刻を記録する。
- 委託者は、自らが管理する施設について、受付の時刻並びに荷役等の開始及び終了の時刻を記録し、運送事業者の求めがあるときは、その記録を提供する。
- 前二項の記録がそれぞれ存在し、その内容が異なるときは、受付簿、トラック予約受付システムの記録、デジタルタコグラフの記録の順に採用する。
- 運送事業者は、待機があった運行について、記録を翌月〇日までに委託者に提示する。委託者は、提示を受けた日から〇日以内に異議を述べないときは、その記録の内容を確認したものとする。
- 運転者は、荷役等を終えたときは、その場で委託者の担当者に記録の内容を示すことができ、担当者が確認したか否かを記録に付記する。
- 前各項の記録は、各当事者が〇年間保存する。
記録の採用順(第3項)と異議の日数(第4項)は、取引先の規模の差が大きいときは、受ける側が不利にならない日数にします。
条文例第〇条(待機時間料)
- 荷待ちの時間は、委託者が到着の時刻又は時間帯を指定した場合において、運転者がその開始時刻より前に到着したときは当該開始時刻から、それ以外のときは到着の時刻(到着後速やかに受付を行ったときは、受付の時刻)から、荷役等を開始した時刻までとする。
- 前項の時間のうち、運転者の到着の遅れに起因して荷役等の順番が後ろになったことにより増えた時間及び運転者が業務から完全に離れて休憩した時間は、荷待ちの時間に含めない。
- 委託者は、荷待ちの時間のうち、一回の受渡しごとに〇分を超えた部分について、〇分単位(端数は切り上げる。)で、別紙の料金表に定める待機時間料を支払う。
- 受渡しの場所の管理者その他委託者以外の者の都合により待機が生じたときも、委託者は前項により待機時間料を支払う。委託者と当該管理者との間の費用の調整は、委託者が行う。
- 時間制運賃を適用する運送において、運賃に含める時間の範囲、並びにその時間内の荷役等及び待機は、運送の依頼の書面に記載する。その時間を超えた部分は、前三項及び別紙の料金表による。
第4項は、運送事業者が管理者に直接請求できない場合を想定した条です。管理者との調整が済んでいないうちは、委託者の負担になります。
計算の例を示します。無料の待機時間を30分、超えた部分を30分単位の切上げ、30分あたりの単価を2,000円(仮)とした場合です。
| 場面 | 時刻の記録 | 起算点 | 荷待ちの時間 | 待機時間料 |
|---|---|---|---|---|
| 指定時刻より早く着いた | 指定は9時00分。到着は8時40分。荷役の開始は10時00分 | 指定時刻の9時00分 | 60分(無料30分を除く30分は1単位) | 2,000円 |
| 指定がなく、到着後すぐ受付をした | 到着は9時00分。受付は9時05分。荷役の開始は10時10分 | 受付の9時05分 | 65分(無料30分を除く35分は2単位) | 4,000円 |
| 無料の時間の中で済んだ | 指定は9時00分。到着は9時00分。荷役の開始は9時25分 | 到着の9時00分 | 25分(無料の範囲内) | 0円 |
荷役そのものの作業は、待機時間料ではなく、積込料・取卸料などの別の料金で扱います。荷役の時間が長引いたときの超過の定めも、料金表に書いておきます。
遅れて着いた場合は、遅れによって増えた時間を除く必要があります。受付簿に到着の順番と、遅れがなければ荷役に入れた見込みの時刻を残しておくと、除く時間の根拠になります。遅れた分の判定が難しい現場では、「指定時刻から〇分を超えて遅れて着いたときは、荷待ちの時間を、到着後の順番で荷役を始めるまでとして算定する」のように、基準を数字で書く方法もあります。
起きがちなことのまとめ
荷待ちの時間は、記録がなければ「なかった」ことになりやすい一方、記録があれば、請求の根拠にも、改善の材料にもなります。運送の委託を受ける側が個人や小規模の事業者のときは、委託ドライバーの労働者性の観点から、待機の指示の出し方にも注意が必要です。契約に書いた時間と対価は、書いた分だけが当事者を拘束します。時間の数え方、記録の方法、確認の仕方、料金の単位を、運送の依頼の書面まで一貫して書いておくことが、荷待ちと荷役に関する契約の中心になります。
よくあるご質問
荷主には、荷待ち・荷役の時間を記録する義務がありますか。
荷主の全員に一律の記録義務があるわけではありません。荷主は、荷待ち時間等の状況と取組の効果を適切に把握することが判断基準に置かれ、年間の取扱貨物が9万トン以上の特定荷主になると、状況を国に定期報告する義務があります。記録の義務を負うのは、荷主の都合で30分以上待機したときなどに業務記録を残す運送事業者です。
待機時間料は、運賃に含まれていますか。別に請求できますか。
時間制運賃では、その時間内の待機や積込み・取卸しを運賃に含められます。含める場合も、積込み・取卸しがあることは書面に明記します。個建運賃などでは、積込み・取卸しの料金は運賃とは別に設定します。待機時間料も、無料の時間と、超えた部分の単位・単価を契約書に書いておくと請求の根拠になります。
荷主が指定した時刻より早く着いたときの待機は、荷待ち時間に入りますか。
国の解説書の整理では、指定された時刻より早く着いた場合は、指定された時刻から荷待ち時間を数えます。早く着いて並んだ時間まで荷主の責任にはしません。契約書にも、同じ起算点を書いておくと、請求の時間と報告の時間が揃います。
荷主と運送事業者の記録が食い違ったときは、どうしたらよいですか。
契約書に、受付簿、予約システム、デジタルタコグラフなどの採用の順番と、食い違ったときに協議する差の大きさ、記録を提示してから異議を述べる日数を書いておきます。現場で運転者が記録を荷主側の担当者に示し、確認の有無を残しておけば、後の争いを減らせます。
荷待ちの原因が着荷主にあるとき、だれに待機時間料を請求しますか。
運送事業者と契約関係にない着荷主には、通常は直接請求できません。運送契約に、受渡し場所の管理者の都合による待機も委託者が支払う旨を書き、委託者が着荷主との契約で調整する形にします。国の解説書も、着荷主の責による荷待ちの対価は、運送契約や発荷主と着荷主との契約で整理することを挙げています。
あわせて読みたいページ
本ページは一般的な情報提供です。届出・許可・登録の運用は、所管の行政機関によって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、一般に見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月22日)。判例は裁判所ウェブサイトの裁判例検索で確認したものに限って掲載しています。参考: e-Gov法令検索 / 物流・自動車局(国土交通省) / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会) / 裁判所ウェブサイト